天照眼拳の試練!?
森の闇に切り込むような賀茂明の拳は、まるで未来の軌跡をなぞるかの如く正確無比だった。
「未来は決まっている。逃げ場はない!」彼の眼は冷たく光り、天照眼拳の力が全身を支配している。
太子はその一撃を寸前でかわすが、賀茂明の攻撃はまるで数手先の動きを映し出すかのように緻密で、体が勝手に反応しているのを感じていた。
「まだ……まだ視えぬ!」賀茂明の眉間に深い皺が刻まれる。未来記の欠片がかすかに揺らぎ、彼の集中力が揺らぎ始めていた。
「未来は“視る”ものではない。己で“選ぶ”ものだ!」太子の声が森に響き、拳が火花を散らして賀茂明の攻撃を弾き返した。
二人の拳が激突するたびに、周囲の木々が震え、風が巻き起こる。賀茂明の眼には痛みと苦悩が滲む。
「未来を知ることは祝福か呪いか……俺はまだ答えを見つけられぬ……だが、その苦しみはお前にもわかるはずだ」
太子は拳を握り締め、心の奥底から叫ぶように言った。
「苦しみを恐れていては拳は強くならない。魂を込め、己の信じる未来を選び取る!それが俺たち天聖聴心流の誇りだ!」
賀茂明の未来視が微かに乱れ、彼の動きにわずかな隙が生まれる。
その隙を逃さず、太子の拳が光の矢のように飛び出した。
だが賀茂明は苦しげな笑みを浮かべ、倒れずに踏みとどまる。
「お前の拳は、ただの予言を超えた……未来を創ろうとしている……それがどれほど恐ろしいことか、俺は知っている」
二人の戦いは、未来を賭けた心の戦いでもあった。
己の拳に宿る苦悩と希望。互いに異なる道を歩む拳士たちの熱きぶつかり合いが、森に轟いた。