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天照の破綻!?未来記の降臨?!呪わしき過去!?


拳が空を裂いた。


太子の魂を込めた一撃が、賀茂明の拳に初めて届いた。未来を視て避け続けてきた男の頬に、かすかに赤い跡が残る。


「……視えない。なぜ……お前の未来だけが……」


五拳聖・賀茂明が、初めて後退した。



「未来が視えないのは、私がまだ“選んでいない”からです!」


太子の声が響く。


「未来は固定されたものではない! 兄さん——河勝兄さんが命をかけて繋いでくれたこの一歩は、私が今ここで選ぶ未来なんです!」


賀茂の目が揺れる。だが、それは恐れではない。迷いだった。



◆ 回想:十五年前、賀茂明と未来記


かつての賀茂明は、静かな山寺の僧だった。戦も権力も関わらず、ただ、拳で心を磨いていた。


ある夜、空が割れ、黒き巻物『未来記』が空から降臨する。


——そなたに授けよう。視る力を。

——だが、視た未来を変えることは、許されぬ定め。


その言葉と共に、賀茂明の両の瞳に、天照眼拳が宿る。


それは、未来を読む拳であり、同時に未来に縛られる呪いの拳だった。



◆ 賀茂明の苦悩


「……私は、ただ……誰かが無意味に死ぬ未来を、止めたかった……」


賀茂が語る。


「お前の兄弟子・河勝も、戦えば死ぬと視えていた。だが、止めなかった。あの愚か者が、その命で……お前の未来を繋ぐと知っていたからだ」


太子の拳が、震える。


「……兄さんを、“駒”として見ていたというのか……」


「いや、違う。信じた。愚かだが、信じた。未来を変える者が現れると……」



◆ 天聖心、未来を打ち破る


太子の拳が光る。再び拳を握ると、天聖鎧が呼応して輝く。


「未来を読む拳が相手でも……心を読む拳なら、届くはずだ!」


天聖聴心流・奥義——魂貫掌こんかんしょう!!


賀茂明の胸に、ただ一度だけ、拳が届いた。


バキィイィィィン!!!


未来記が、空中で砕け散った。



賀茂は地に膝をつき、拳を見つめる。


「……視えない……いや、もう……視なくていいのかもしれん……」


太子が近寄る。手を差し伸べる。


「もう一度、共に創りましょう。視る未来じゃなく、“選ぶ未来”を」


賀茂明はしかし、無言で立ち上がる。そして、哄笑した。


「その未来に立つのは、俺一人で十分だ。その未来にはお前はいない!」




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