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読書家皇子は精霊に愛される  作者: 月山藍
第四章 オルコリア動乱編
93/103

風雲急を告げる

更新が滞り申し訳ありませんm(_ _)m

とあるコンクール用の原稿を仕上げていて予約投稿すら忘れていました^^;

本日から改めて更新していきますのでよろしくお願いいたします!

部隊は順調にドワーフ自治領へ近づいていた。

あと一日ほどで到着するため各隊を率いる者たちを集めて今後に向けての軍議を開いた。

到着時の動きやまだ見ぬ外征派との戦いに備えての諸々を決めていると不意に陣幕の外が騒がしくなった。


「何事だ?」

「私が様子を見て参ります」

「頼む」


陣幕の外に出た数分後、駆け足で戻ってきたホフマン卿。

その顔には焦りと混乱が伺えた。


「申し上げます! ドワーフの一団が保護を求めております!」

「なに? 数は」

「約三百! うち二百名ほどは女子供のようです」

「とりあえず保護しろ。ドーレア卿、対応を任せる。詳細な人数がわかり次第、再度報告を」

「かしこまった」

「ホフマン卿はドワーフ達に事情を聞いてきてくれ。状況を知ろうにも情報がないからな」

「ただちに!」

「カシアン」

「ここに」

「黒鳳騎士を警戒態勢に移せ。白鳳騎士は小隊ごと空にあげて周辺の警戒に当たらせろ」

「御意に」


手早く指示を出しつつ状況を整理する。

何故ドワーフが自治領の外にいるのか。

考えられるのは何らかの問題があり自治領を出なければならなくなったか、俺たちの救援を待ちかねて自らアルニア皇国を目指し始めたか。

もしくは…。


そこにホフマン卿が傷だらけのドワーフを連れてやってきた。


「ホフマン卿、そちらの方は?」

「彼はドワーフ戦士団のゴラン殿です。現状を説明したいとの事でしたのでお連れしました」

「そうか。それではゴラン殿、早速で悪いが状況を説明してくれ。何故ドワーフがこんなところにいる?」

「事態は急を要するため挨拶は割愛させていただきます。まず我らがここにいる理由ですが我らの自治領が陥落したためです。現在はアルニア皇国を目指して敗走している最中でした」


ガタリと何人かが腰を浮かせた。

ドワーフ自治領が陥落したという知らせはそれだけ大きな衝撃を与えた。

いかに数で優る外征派とはいえ精鋭揃いのドワーフ戦士団を打ち倒して自治領を落とすには早すぎる。

それにいくつも疑問があるがその前に恐らくやるべきことがある。


「遠路はるばる我らの救援に来て頂いた中、恐縮ですが民を逃がすために殿しんがりを受け持っている王と戦士団をどうかお救いくだ……」

「承った」


ゴランが言い切る前に了承をする。

そもそも俺たちの目的はドワーフ自治領の救援。

力及ばず間に合わなかったがまだ人命は救える。


「カシアン、外征派との交戦を許可する。騎士団と金虎隊を率いてドワーフ戦士団の撤退を支援しろ。必要に応じて白鳳も使え」

「拝命しました」

「プラウム卿とレクラム卿は北部貴族軍の半数と宮廷魔術師団と共にカシアンの隊を援護を」

「かしこまりました!」

「ドーレア卿に伝令、北部貴族軍のもう半数と共にドワーフの民を手厚く保護するように」

「はっ!」

「陣の守りはどういたしますか?」

「俺が銀狼隊と担当する」

「っ!?」

「迅速に行動しろっ! いけ! 」

「「「「ははっ!!!!」」」」


一気に慌ただしくなった陣中を兵たちが走り回る。

そんな中でゴランだけが呆気にとられている。


「どうされましたか?」

「…いえ、こんなに早く動いてくださるとは思わず」

「我らが大将ならば当然です。決断力がなければレシュッツで亡くなっていたでしょうね」

「レシュッツということは…! もしやあの御方が……!!!」

「はい。我が国の最も新しい英雄です」


ホフマンは胸を張ってそう言った。





追い縋ってくる猪の魔獣を大戦斧で叩き切り右から飛び出す狼の魔獣を蹴り飛ばす。


「ふぅ…。流石に堪えるな」

「王よ! お下がりください! その傷でこれ以上の戦いは……」

「やかましい! この程度唾でも付けておけば治るわ! 口より手を動かしてこの苦境を乗り越えるぞっ」


片腕を失い腹部に大きな裂傷を負いながらも片手で身の丈以上の大戦斧を振り回すドワーフ王。

その勇ましい姿は常に戦士たちを鼓舞し続けている。

戦闘開始から既に二日。

領土を失い民を連れて敗走するドワーフ戦士団はこの二日間まともに休むことなく戦い続けていた。

四百以上いた戦士たちもいつの間にか百名程度しかいない。

あの魔人戦争を戦い抜いた精鋭たちも少なからず死んでいった。

死した同胞を悼むことすら許されぬ地獄の中でドワーフたちは全力で南へ逃れていた。

まともな交流もないアルニア皇国の救援が近くに来ているという一縷の望みを賭けて。


「王よ! 左より新手の魔獣が!」

「耐えよっ! 我らが倒れれば後ろの民たちも死ぬ! 奮起せよ! 戦士たちよ! 諦めるな!」


ガラガラの濁声で鼓舞するドワーフ王だが長くはもたないと分かっていた。

かくなる上は少しでも多く道連れにするしかないと自決用の熱魔石を爆発させようと考えたその時、ドワーフたちに迫る魔獣たちに向けて魔術の雨が降り注いだ。

ハッと後方を振り返ったドワーフ王の目に映ったのは青い布地に金色の鳳が描かれた無数の旗。

そしてこちらに向かって駆けてくる漆黒の騎士たちの姿だった。


「あれは……!!! 王、アルニア皇国軍です!」

「……儂らの為にここまで」

「がっはっはっ! グゴリーの奴め。本当に皇国を動かしよったわ!」


破顔して笑うドワーフ王。

魔獣の雨を抜けてきた魔獣がそこへ迫るが両側から躍り出た虎人族が襲いかかった。

足を止めたその間に漆黒の騎士たちはドワーフ達を庇うように横陣を敷いて迎え撃つ。

魔獣たちは瞬く間に倒され半刻もすると殲滅が完了した。

最後まで応戦し続けていたドワーフ王が傷の手当を受け始めたところで一人の騎士がやってきた。


「アルニア皇国黒鳳騎士団副団長のカシアン・フォン・ルルフェルでございます。少々お話をさせていただいてもよろしいでしょうか」

「もちろんだ。儂がドワーフ王ギドレムだ。此度の救援ドワーフを代表して礼を言う」

「我々は主君の名に従ったまでにございます」

「先に逃がした民たちは無事か?」

「はい。ここから少し行ったところにある我が軍の野営地にて保護しております。つきましては情報共有も兼ねてお話をお聞かせ願いたいのですが……傷の具合は大丈夫でしょうか?」

「む? ああ! 傷のことか! 人族では深手だろうが儂にとってはかすり傷よ! 十分に休ませてもらったし早速移動しよう。急ぎ知らせねばならないこともあるからな」

「…かしこまりました。馬をご用意しておりますのでこちらへ。護衛の方の分も馬をご用意いたしましょうか?」

「必要ないぞ。儂のみで行くからな」

「……よろしいのですか?」

「みな死力を尽くしてここまで来たが合流できた今も油断はできぬ。休める時に休ませなければな」

「それではこちらへ」


カシアンは他の騎士たちに傷の手当てが終わり次第、陣に戻るように命じたがギドレムがそれに待ったをかける。


「それでは遅い。ドワーフは頑強じゃ。傷の手当ては移動しながらで良い。少しでも早く後方へ引かせるべきじゃ」

「…分かりました。そのように」


ドワーフ王の並々ならぬ様子を見たカシアンはそれに従った。

ギドレムは片腕を失い腹に穴が空いているとは思えないほど軽やかに馬に乗った。

カシアンがゆっくり走らせれば急がねばならないと追い越す勢いで走り出した。


「ドワーフ王、傷に障りますのでもう少し速度を……」

「儂の身体はまだいけると言っておる。それに貴殿らの大将に早く伝えねばならぬ」

「…何をですか」


カシアンが訊ねるとギドレムは険しい顔でこう言った。


「魔人戦争以上の災いが始まったと」

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