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読書家皇子は精霊に愛される  作者: 月山藍
第四章 オルコリア動乱編
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エルチェの街

 ドワーフの救援を目的とした今回の出兵は国内外問わず注目されていた。

自国の発展に重きをおいた内建政治によって大陸一の豊かな土地を築いたアルニア皇国。

 長い歴史の中で他国への派兵をした回数はたったの二度。

 魔人戦争時と今回である。

 歴代皇王が領土の拡大に興味を持たなかったため他国の者にとってアルニア皇国の軍事力は未知数であった。

 しかし、昨年の帝国との戦いや海魔異変、そしてレシュッツ悪魔事変。

 いずれの戦いも激しいものであったがアルニア皇国は大きな犠牲を出すことなく勝利してきた。

 特にレシュッツの一件でアルニア皇国は悪魔を単身撃破できる国として名を馳せた。


 これまでの戦いと規模、その相手から今回のドワーフ自治領への救援任務は簡単な任務になると誰もが思っていた。

 戦闘になるとしても相手は二年以上も内戦を繰り広げ疲弊している。

 対するアルニア皇国軍は士気も練度も申し分なく万全の状態。

 目的地であるドワーフ自治領がオルコリア共和国の北東部に位置する関係上、大軍を組織することは叶わなかったが宰相やユグパレが中心となって可能な限りの精鋭を編成した。


 総大将 第三皇子ルクス・イブ・アイングワット。

 副将 黒鳳騎士団副団長 カシアン・フォン・ルルフェル。

 黒鳳騎士団第二分隊 百名。

 黒鳳騎士団第三分隊 百五十名。

 白鳳騎士団第二分隊 八十名。

 各宮廷魔術師団より選出された精鋭 六十名。

 北部貴族軍 約四百名。

 アングレームより虎人族で構成された金虎隊二百名。

 狼人族で構成された銀狼隊二百名。

 これにジャマフ伯爵の補給部隊三百名を加えた千五百名が今回の作戦参加部隊である。


「いやはや壮観な眺めですな。まさか我が人生においての目標、デラン川の遡上そじょうが叶うとは。長生きはするものですな」

「長生きを語るほど年老いてないだろう」

「何をおっしゃる。殿下と比べれば老害と言われても文句は言えませぬ」

「そもそも俺と比較すればほとんどの者がそうなるだろうに…」


 船上で俺と話しているのはプラウム伯爵。

 北部貴族の重鎮であり今回の出兵に際して我先にと参加を表明した物好きである。

 従軍する北部貴族は皆プラウム伯爵を寄子とする貴族たちなので貴族軍の取りまとめ役となっている。


「さてさて。もう少し進めば国境を超えますが我らの歓迎の準備はなされていますかな?」

「なにもないことが一番だが十中八九、何かあるだろうな。各船に伝達、対魔術警戒を厳に。宮廷魔術師団は応戦準備」

「はっ」


 俺が乗船する旗艦から白鳳騎士が数名飛び立ち各艦へと伝令へと走る。

 本来であれば旗信号で交信し伝達するところをありのままの言葉で指示できるというのはとても便利だ。

 詳細な指揮や動きも伝達できるのも素晴らしい。


「鬼が出るか蛇が出るか」


 しかし、俺やプラウム伯爵の予想に反し国境を超えても待ち伏せの部隊はなかった。

 不気味なほど静かな国境沿いを抜けた俺たちはエルチェという小さな都市へ辿り着いた。

 ここはオルコリア共和国の内建派のコエーリョ子爵の領地でありアルニア皇国が密かに援助していた貴族の領土である。

 事前に宰相が根回しをして現在のオルコリア内の情勢を教えてもらう算段となっている。

 だが少し様子がおかしい。


「煙が上がってるな。ここまで戦火が広がっているのか」

「いえ、どうやら魔獣のようです。ただ数が尋常ではありません。数百から千体ほど…。小規模ながらも魔獣津波スタンピードかと。殿下、どうしますか」

「…消耗したくはないが素通りという訳にもいかないだろ。各船に伝達、魔獣津波スタンピードを鎮める。エルチェ西側に接岸し速やかに下船。左翼を黒鳳騎士団、右翼を北部貴族軍、中央に金虎隊と銀狼隊。宮廷魔術師団は船上から援護。全体指揮はカシアンに任せる」


 指示通りに動き出したアルニア皇国軍はとても機敏だった。

 下船から陣形の構築までわずか数分。

 戦闘開始後も各隊ごとに連携し魔獣を撃破していった。

 特に中央を任せた金虎隊と銀狼隊の勢いは凄まじかった。

 拳闘士さながらな虎人族の拳は硬い甲殻系の魔獣を一撃で粉砕し、狼人族の爪と牙は紙切れの如く魔獣たちを引き裂いていた。

 一通りの掃討を終えたあとでコエーリョ伯側から面会の申し出がありこれに応じた。

 プラウム伯爵に後始末を託して俺はカシアンと数名の黒鳳騎士、虎人族と狼人族の長であるプラデラとヴァルトを従えてエルチェに入った。

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