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読書家皇子は精霊に愛される  作者: 月山藍
第四章 オルコリア動乱編
75/103

アングレームへ

いつの間にか30万字を超えていたようです…( ̄▽ ̄;)

ここまで応援いただき本当にありがとうございます。


今話から第四章に突入します。

筆者も気合いを入れていきますのでよろしくお願いいたします!!!

 帝国と冒険者ギルドから舞い込んだ対悪魔会談の誘い。

 アルニア皇国は迅速に動き始めた。


 第二皇子トレシアは会議の翌日には自身の腹心たちを伴って皇国北部の新都市予定地へ。


 その四日後、第一皇子ユリアスはユグパレ元帥と黒鳳騎士団の精鋭百名と共に帝国の首都である帝都ルクディアスへ出立した。


 それから一週間ほど経過する頃には残暑も落ち着き秋の訪れを感じさせる肌寒い風が吹くようになっていた。


「ルクス殿下、もうすぐ到着いたします」

「…………」

「ルクス殿下、もうすぐ到着いたします!」

「…………」

「あの! ルクス殿下!!! もうすぐ!!!! 到着!! いたします!!!!」

「わかった。だが、そんな大きい声で叫ばないでも聞こえるぞ」

「反応がなかったので大きくしたんですが!?」


 同乗する白藍色の髪の青年を無視して車窓の先を見る。

 皇都から馬車で進むこと十数日。

 半年前に仙国スオウへ向かう際にも通った街道を進みアストレグ公爵領内を通過。

 そこから更に北へ数日進んだ場所が今回の目的地、アングレームになる。


 北部と西部の境に位置するこの場所は元々皇王直轄地として代々国が管理をしていた。


 皇王直轄地とは金や銀、織物や砂糖といった重要物資や貴重資源が豊富に取れる土地を国で管理し富の集中化を防ぐと共に独占するために設けられた土地である。

 しかし、今回の移民騒動に際して現皇王である父上は大胆にも四箇所の皇王直轄地を解放した。

 最重要である金や銀が取れる鉱山までは手放さなかったが、それでも相当の実利マイナスとなるはずだ。

 それでも解放したということは今回の移民騒動が無事に収まればプラスになると考えてのことだろう。


「…責任なんてものとはおさらばしたかったんだけどな」

「何を仰ってるんですか。その勲章を陛下から頂いた以上責任は常に付きまといますよ?」

「ならこれあげるからあとは任せる」

「ちょっ! 投げないでください! 我が国の歴史上四人しか叙勲されていない名誉ある勲章なんですよっ!?」

「おめでとう。ロミエルで五人目になるな」

「こんな渡され方は嫌ですよっ! それに勲章の窃盗とかで死罪になりますって!!!」


 白金鳳勲章を手にわたわたと慌てる青年の名はロミエル・フォン・フレミネア。

 彼は三年前まで西部の勇、トーリア子爵家の次男であった。

 数年前から子爵領を大きく発展させ、三年前に中規模魔獣災害を自ら陣頭に立って収拾したことが決定的な功績となり俺がスオウで大変な目にあっている頃に男爵位を授けられた貴族の初代である。

 とはいえ、領地を持っている訳でもないので扱いとしては貴族位を有する皇立修学院に通う普通の学生。

 それが出立を目前にして急遽、彼が俺の補佐として同行することが決まったのだ。

 その理由が気になり宰相に問い合わせると、


「彼は同世代の中でも特に文武に優れており、今後のアルニア皇国を担う若者の一人となるはずです。副大臣職で多忙なトーリア卿が彼に領政を任せて以来、子爵家の領地は収益を八倍にまで増やしています。領地の運営経験がないルクス殿下にもよい助言をしてくれると考えてのことです」


 との返答が公的には帰ってきた。

 そう、()()には。

 図書館で寛ぐ俺の元にわざわざ訪ねてきた宰相はこうも語った。


「彼は昔から先進的な考えの持ち主で同年代の中でも明らかに頭抜けた存在です。修学院入学の際はエリニア殿下を抑えて首席で合格しています。それから一目置かれたのかエリニア殿下の数少ない異性の友人となっています。陛下としても彼の才と人柄を認めており、ゆくゆくはエリニア殿下の婚約者へと考えておられます。そのためには最低でも伯爵位まで陞爵してもらわなければいけません。そのための功績を殿下の補佐という形で上げさせたいのです」


 要するに優秀なロミエルの囲い込み、もといエリニア姉上の婚約者にしたいから功績を上げさせてということだ。


 俺のように引きこもることなく、社交の場に出ているエリニア姉上が今まで婚約者がいないのには訳がある。

 エリニア姉上は自分よりも賢い殿方でなければ婚約者として認めないと公言しており、過去一度も姉上との知恵くらべに勝てた者がいなかったのだ。

 そんなエリニア姉上に唯一知略でまさったのがロミエルなのだ。

 父上としては二重の意味で彼が欲しいのだろう。

 また、エリニア姉上がロミエルのことをどう思ってるのか気になったのでお付きの侍女に聞いてみた。


「ルクス殿下もお気になさっていらしたのですね…! エリニア様は学院から戻られると決まってロミエル様のお話をします。内容は小試験の点数で負けたとか些細なことですがお話される際はとても幸せそうに話されます。以前、異性としてお好きなのですかと聞いたことがあるのですがエリニア様なんて仰ったと思いますか? ……きっと好きなのでしょうね。ですよ!!」


 と興奮気味に語っていたのでエリニア姉上としても悪くない話なのだろうと思う。


「とにかく! 勲章はお返ししますので! ちゃんと付けてくださいね! もうアングレームはすぐそこですよ!」

「わかったわかった。着いたら俺はのんびりしてるからあとは任せた」

「殿下ぁ…!!」


 俺はロミエルの悲痛な声と一緒にアングレームの街に足を踏み入れた。

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