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読書家皇子は精霊に愛される  作者: 月山藍
第三章 禁書探索編
56/103

変わり者の皇族と貴族嫌いの平民

いつの間にか20万字を超えていました。

こんなに続くとは思いませんでしたがらこれからも書いていきますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

 やってきたメイド服を着た女性は入室し俺の姿を認めると一礼した。

 しかし、その目にははっきりとした敵意が滲んでいる。

 俺の傍に立つアンジーナが何かを言おうとするがそれを手で制する。


「よく来てくれた。少し話を聞きたくて君をここに呼んだ。その説明は…必要か?」

「いえ。既にお話は伺っておりますのでそれには及びません。それよりも、私に聞きたいこととは?」

「それなんだが…君はいつも通り話してくれていい。俺は気にしないし、ここは公式の場じゃないからな」


 こんな敵意満載の目をした人に敬語で喋られても気になってしょうがないしな。

 それを聞いたメイドは下腹部の前で組んでいた手を自由にし、あからさまに力を抜いた。

 いつも通りとは言ったがこんなに速攻で適応できるのはなんというか…すごいな。


「貴族より偉い皇族様っていうのは偉そうにふんぞり返っているだけだと思ってたけど、そうでもないのね」

「まぁな。俺も堅苦しいのは苦手だし普通に話せた方が楽だからな」

「へぇ…第三皇子だっけ? 変わってるのね」


 敵意の視線が先ほどよりはいくらか弱まったように感じる。

 …その分、アンジーナの目がメイドを殺さんとばかりに睨みつけているが当の本人はどこ吹く風だ。


「そういえば君の名前は?」

「サーラ・ユオン。どこにでもいる奉公人よ。それで神隠しのことについて聞きたいってことであってる?」

「ああ。数年間にも渡って南部で起きてる事件を貴族はもちろん、王都の役人は誰一人として解決できていない。それどころか知る者すらいないと思う。だが、俺は運良く知ることができた。だから皇族として、この事件を調査することをここに宣言しよう」


 大事な人がある日忽然と姿を消し、会うことができなくなる。

 もしまたフィアやシアがいなくなったら俺は冷静ではいられないだろう。

 きっと俺が彼女の立場でもあらゆる手段を用いてでも情報を得ようとしただろう。


 それに皇族としてもこの事件は見逃せない。

 何せこの神隠し事件、どうにもきな臭い。

 都市で人が数人消えるというのは正直全くない話ではない。

 貧民街を中心に人攫いが横行するというのも残念ながらよくある話だ。

 しかし数年もの間、毎月のように同じ都市で人が消えるというのは…異常だ。

 人攫いをする組織というのは同じ場所に長く居座ることはない。

 長く滞在して人を拐かせばそれだけ怪しまれる。

 故に数人攫っては場所を変えるというのが常套手段だ。

 だというのにこの事件は数年規模で継続している。

 明らかに異常といえるだろう。


「そのためにもサーラの話を聞かせてほしい。君が貴族に対して良い感情を持っていないことは聞いている。だから俺を信じろとは言わない。だが、俺の立場ならもっと効率的に調査ができる。神隠しの解決を願うのなら俺を利用しない手はないんじゃないか?」

「…犯人が貴族だったらどうするの? 面倒になる前に平民の私を消すんでしょ?」

「貴族が関わっていたならその貴族を処分する。俺は派閥や謀略に興味ないしな」


 こちとら伊達に図書館に引きこもってない。政争適正がゼロに等しい俺にとって地方の貴族が処分されようが知ったことではないのだから。


「…貴方本当に皇族? 影武者とかじゃなくて?」

「正真正銘の第三皇子だよ。皇族一の趣味人のな。それでどうする? 俺と組むのか?」

「私は貴族を信用しない。自分の利益しか考えないクズばかりだから。皇族も嫌い。私たちの苦しみを知らずにのうのうと生きているから。でも、貴方を頼ることが最善ってことは理解してる。私は彼を見つけ出すためなら手段を選ばないし選べない。だから…」


 サーラは恭しく一礼して膝をついた。


「第三皇子殿下のご提案、謹んでお受け致したく存じます」

「わかった。それなら俺たちは今から同志、神隠しの真相を究明するための盟友だ。立場や身分も関係ない。いいな?」


 俺はサーラへと歩み寄り手を差し出す。


「盟友に対してそんな礼はいらないだろう?」

「…貴方、変わり者すぎるわ」

「よく言われる」

 

 ふっと笑ったサーラは優しく俺の手を取って立ち上がった。

 その目からは敵意が霧散していた。


「六年にも及ぶこの事件を俺たちで終わらせよう」

「ええ。絶対に」


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