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読書家皇子は精霊に愛される  作者: 月山藍
第三章 禁書探索編
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エラルドルフ領へ

 道中これといった出来事のないまま旅路は進んだ。

 強いて言うならレインの魔術講義が熱を帯び、スオウの異変でも使っていた水系統魔術第九階位に属する『凍龍槍』を空へ向かって放った際に辺りが冷え込んで騎士から苦言を呈されたくらいだろう。

 …しっかりしていると思っていたが魔術が絡むと熱くなりやすいらしい。


「皆様、見えてきましたよ」

「「わぁ!!!」」

「…この景色は変わらないですね」


 馬車の外からアンジーナが声をかけてくれたので早くに気づくことができた。

 小窓から目を輝かせながら都市を見つめるフィアとシア。

 以前来たことがあると言っていたレインは懐かしげに目を細めた。

 

「あれが音に聞こえたエラルドルフ公爵領第一都市アバンダントか」


 森の中にそびえる白亜の城。その周囲には緑あふれる街と整備された水路や豊かな果樹園が栄えている。代々のエラルドルフ公爵が年月をかけて築き上げたという森と共に生きる観光名所としても名高い街。

 故に豊穣の都市(アバンダント)


「なるほど。これは確かに豊穣アバンダントという名に相応しい」

 

 はしゃぐ妹たちを眺めながらアバンダントの門へ辿り着くのを待った。





 アバンダントの城門前にやってくるとほっそりとした壮年の男性が兵を従えて待っていた。


「ルクス殿下、ようこそおいでくださいました。エラルドルフ公爵領を代表して歓迎致します」

「公爵自らの出迎え感謝する。しばらく滞在させてもらうが問題ないか?」

「無論にございます。殿下をこの街に迎えることができ大変光栄に思います。道中お疲れのことでしょう。まずは我が家にてお休み頂ければと思います」

「それはありがたい。ぜひお願いしよう」


 少し違和感を感じる問答ではあったが今は言及しない。

 エラルドルフ家の導かれて緑豊かな街を進む。

 この地に住まう民たちは青い布地に描かれた獅子、すなわち皇族の家紋を目にして目を丸くしている。

 エラルドルフ公爵には俺がやってくることは伝わっていたし、到着前に先触れは出していた。

 それでも驚いているのはきっと公爵が民たちに情報を下ろしていなかったのだろうな。恐らく俺の暗殺や襲撃への対策なんだろうが俺にその価値を感じるものはいない。なにせ俺は人畜無害な読書家皇子、何者もだろうが俺を襲う暇があればもっと身近で厄介な政敵を排除するしな。

 やがて俺たちを乗せた馬車はアバンダントの城へと入城した。

 俺が馬車から降りるとエラルドルフ公爵とその側近たちが臣下の礼をもって出迎えた。

 …さて、気になっていたことを確認しようか。


「エラルドルフ公爵、この旅行についてなんと聞いていた?」

「はっ、宰相殿からの知らせではルクス殿下が国内旅行という名目でご来訪されると」

「…他の同行者については一切聞いていないのか?」

「私は伺っておりませんが……っ!?」


 言葉で説明するよりも早いと思い馬車の扉を開け放った。

 俺と同じ銀髪の双子と薄紅色の令嬢を見た瞬間に公爵も側近たちも大きく目を見開いた。

 どうせ父上がフィアとシアの存在を隠したかったのだろうが公爵には知らせてもいいだろうに…。

 驚く公爵家の人々にフィアとシアを紹介すべきかと思ったがエラルドルフ公爵も側近たちももう一人の令嬢に視線を集中させていた。

 

「…レイン嬢」

「ご無沙汰しております。エラルドルフ公爵。この度は皇女殿下の護衛としてお世話になります。何卒、よろしくお願いいたします」

「…相わかった」


 何やら含みのある会話を繰り広げているレインとエラルドルフ公爵。

 そして気まずそうでありながら少し懐かしそうな顔をしている公爵家の面々。

 うん、この空間で一番気まずいの俺たち皇族の面々だろ。

 そんなことを考えているとコホンと咳払いをしてる者がいた。

 エラルドルフ公爵によく似ている少年は俺に対して恭しく礼をしてエラルドルフ公爵に向き合った。


「父上、皇子殿下をはじめとする皆様は遥々皇都からいらっしゃってお疲れのことでしょう。このような場所で立ち話というのは礼節に欠くかと」

「これは失礼いたしました。まずは我が家にておくつろぎください」


 エラルドルフ公爵の案内に従って俺たちはアバンダント城の中へと足を踏み入れた。

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