表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読書家皇子は精霊に愛される  作者: 月山藍
第一章 アルニア皇国防衛編
2/77

第一皇子の来訪

 突然現れた来客者、第一皇子であるユリアス兄上に困惑の表情を浮かべていると兄上はニヤリと笑った。


「予想外のことに弱いのは相変わらずなようだな」

「…二年ぶりに会った兄弟の最初の会話がこれですか」


 ユリアス兄上は帝国国境である東部国境守備軍を率いる将軍。

 故に一年に一度王都に帰って来れるか来れないかというお立場だ。

 そんな彼が目の前にいる、浮かぶ疑問は一つしかない。


「何故ユリアス兄上がここに?」

「大した理由じゃない。父上が皇国の今後を話し合う重鎮会議をするというからと強制的に呼び出して来ただけだ」

「…世はそういうことを大した理由というのでは?」

「ははっ、細かいことは気にするな」


 一番きな臭い東部国境の守りが本当にこの人で大丈夫なのだろうか。

 ユリアス兄上はひとしきり笑うと少し真剣な顔になった。


「ところで、ルクス。お前はいつまでこの図書館に入り浸っているつもりだ?」

「この世から本や書物が消え去るまでですかね」

「お前らしい答えだがなぁ…。お前も今年で十八だろう? 俺の初陣も十八だった。そろそろ、お前も…」

「嫌です」


 溜息をつく兄の姿は父上そっくりだなぁ。


「大方、父上にユリアス兄上からも説得してくれと言われたのでしょう? 残念ですが、誰に言われても政治はもちろん、戦争になど絶対に関与しませんよ」

「だろうな。俺も父上にそう申し上げたんだがな」


 よく分かってらっしゃる。

 さすが俺を図書館に連れてきてしまったお方だ。

 そもそも俺が関わるとどの事柄も絶対にややこしくなる。

 特に精霊契約者ということが露呈した時。

 そう、これは国を大切に思うからこその致し方ない対応なのだ。

そういうことにしておこう。

 

「まぁ俺はダメ元だったからな。父上にはやはり無理だったと言っておく」

「よろしくお願いします……俺は?」


 今回も余裕でこの生活を守ったと安堵しようとしたが、ユリアス兄上の言葉に違和感を感じた。

 さっき俺はと言わなかっただろうか。


「あぁ、本命の説得役は他にいるようだ。まだ安心するには早いみたいだぞ?」

「勘弁してくださいよ…」


 ユリアス兄上は俺にかなり甘い。

 だから本命ではないと言われたら納得できる。

 しかし、他に誰を用意してくるというのだろうか。

 皇族は…ないな。

 俺に費やす時間を持っている暇人などいないだろう。

 第四皇女と第五皇女の双子は俺の弱点ではあるが幼いから説得に不向きということで除外。

 となると…


「全く予想がつかないですね」

「俺も聞くまで分からなかった。まぁ何だ、頑張れよ」

「ユリアス兄上はもう知っているんですよね? こっそり教えてくれませんか?」

「それはフェアじゃないだろう。今の生活を守りたいのなら自分の力で勝利を掴み取れ」


 ちっ、ダメか。

 言ってることが正論過ぎてぐうの音も出ない。

 用事を済ませたユリアス兄上が背を向け、図書館から出るべく扉に手をかけた。

 

「ルクス、俺にはやはりお前がただの趣味人には見えない。いつか共に戦場で肩を並べる気がしてならない」

「俺はこの生活が気に入っていますし戦場に立つなんてありえませんよ」


 そう返すと兄上はチラリと俺を見てやってきた時と同じ笑みを浮かべた。


「俺の勘はよく当たるんだ。何かあったら頼むぞ」


 …どうか外れますように。

 そう祈らずにはいかない俺だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ