波乱の辺境伯領9
「東の村が野獣の襲撃にあった」
そんな報告が届いたのは、その日の夜。
室内に重苦しい空気が流れた。
恐れていた事態が起こったのだ。
領内を手分けして騎士団が見回っては居たものの、それでも限界はある。
しかも、存在を見逃されていたほど小さな村。
周辺地域と行き交うことも無く、自給自足していた村の情報は、漏れることなくただ歴史を刻んでいたんだ。
村が襲われた事で助けを求めに来た青年から事情を聞いて場所がわかったそこは、とても閉鎖的な村だった。
「被害状況の詳しい詳細と、救援を優先てくれ」
お父様の苦痛に満ちた声が響く。
「かしこまりました」
一礼した騎士は、慌ただしく部屋を出ていく。
「被害にあった村への物資を急ぎ用意しなければいけませんね」
「ああ。手配を頼む」
「かしこまりました」
お母様は頷くと、強ばったままの顔でドレスの裾を翻しその場を後にした。
「お父様、僕が物資を持って被害にあった村行きます」
「お兄様! それは私が」
「アリーシャは、文献を頼むね。君にしか出来ないことだ。一日でも早く原因を見つけ出して欲しい」
ぽんぽんと頭を撫でられた。
「……お兄様」
青ざめたままの顔でお兄様を見上げる。
なんて、無力なんだと、悔しくなった。
「ジオルドに任せよう。一個大隊をつける。オスカーが戻り次第、後を追わせるので、準備が出来たらたってくれ」
「はい。次期辺境伯当主として、全力を尽くします」
握りしめた拳を胸に当て誓いを立てるお兄様。
「私、文献を調べ直してきます」
いても立っても居られなくなった私は部屋を飛び出した。
お兄様が危険を承知で現地に行ってしまう。
私にはそれを止める事も出来ない。
「「お嬢様」」
追いかけてくる声に振り向く事もせずに廊下を駆け抜けた。
何か見落としている事は無いんだろうか。
どんな情報でもいいから。
どんな小さな事でもいいから。
文献をめくり続ける。
図書室に響くのは、息遣いと本をめくる音だけ。
焦っても何も見つからないの分かっている。
それでも、焦らずには居られなかった。
夜がふけても、調べ続けていた私は、明け方になって、意識を失う様に机の上に突っ伏したのだとか。
翌朝になってキャサリンからお小言を貰った。
お兄様は朝早くに屋敷を出たようで、見送りに間に合わなかった。
食べやすい軽食を用意してもらい図書室にこもり続けた。
「お嬢様、今回被害にあった東の村から届いた文献です。なんでも、村長の家に代々受け継がれてきたものらしいです」
カステッドから差し出されたそれを手に取る。
年代物らしいそれは痛みが激しく、私は破れないようにそっと、開いた。
日時が書かれたそれは、誰かの日記の様なものだった。
初めは取り留めもない日常の事が書かれているだけで、特に目新しい物も無かった。
いつも読んでくださりありがとうございます(⁎-ω-⁎))"ペコンチョ
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