波乱の辺境伯領5
「それならばいただいて帰ろう」
「やった!」
思わずはしゃいでしまったのは6歳児の私だ。
「まあまあ、本当に愛らしいお嬢様ですね。私、お嬢様のファンクラブに入りたいです」
身悶えるマレーナに、王都の彼女を思い出したのは私だけではないはずだ。
そして、私にはファンクラブなんてものは無いのだよ。
苦笑いを浮かべてしまったのは仕方ない。
「申し訳ありません。マレーナは可愛いものに目がないのです」
肩を竦めたアザリスも苦笑いだった。
「アリーシャに害がないのであれば問題ない」
お兄様の基準はそこなのね。
「ええ、アリーシャお嬢様を崇める事はあっても、害する事は無いと誓えます」
アザリス、崇めるのも止めて欲しいです。
「ところでアザリス、領都では風車の動力を粉挽きと並行して、照明として使用すると聞いたのだけれど」
この世界には電気という概念が無いのに、照明に使う事にした事を不思議に思っていた。
普段は天然の魔石を利用して照明に使用しているのだ。
とは言え魔石は高価なもの、庶民は夜になると松明や油ランプなどを使用している。
「はい。我が家に代々続く文献に照明に関しての記載があったのです。私が見てもさっぱり分からないのですが、風車事業の為に集めた職人の中に、それを読み解ける者がいたのです」
「そう……」
古い文献……もしかしたら、私以外にも別世界から来た人が居たのかもしれない。
「その者を中心に皆で話し合い、どうにか形になってきましたので、辺境伯領初の照明を作ろうということになりました」
「夜道を明るく照らし出せるようになれば、領民の暮らしも安全になるね」
「はい、ジオルド様の言う通りでございます。先ずは風車の近くに建築する予定の塔に光を作り出す事を目指しています。ゆくゆくは領都の夜道がその光で満たされるようになればと思うのです。まさにロマンです」
お兄様の言葉に沸き起こる衝動を抑えきれないとばかりにアザリスは前のめりになった。
領都にある街頭は、辺境伯領が提供する魔石により灯されている。
それを動力から作り出した電力で補えるとなれば、今よりも夜道が明るくなるだろうし、今まで設置出来ていない場所と補えるのでは無いかと思う。
ただ、それには蓄電と導線を作り出さないといけないのだろうね。
先は長くても、技術者達が知恵を出し合い、切磋琢磨しながら、いつの日か作り上げる、そんな気がした。
「素敵な計画ね」
「はい。わくわくが毎日止まりません」
アザリスは子供のような顔で笑う。
「この人と出会って、ここまで活き活きしている姿を見たのは初めてなんですよ」
マレーナはやれやれと苦笑いしながらも、アザリスの姿に満足しているようで。
「辺境伯でも何か手伝える事があれば言って欲しい。共に辺境伯領の発展に邁進しよう」
「はい、ジオルド様」
アザリスとお兄様が、固く握手を組み交わすのを見つめながら思う、いつの時代も新しい技術に対してのにロマンは尽きないのだと。
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