波乱の辺境伯領3
「アリーシャお嬢様、ジオルド様、こちらでしたか」
その声に振り返ると、額の汗を拭いながらこちらへやってくる領都の代表アリザスの姿。
アリザスは少し小太りなので、冬でも移動するだけであんなにも汗をかくのね。
「やぁ、アリザス。お邪魔してるよ」
「ジオルド様達ならば何時でも大歓迎です。ご連絡頂ければお出迎えに参りましたのに」
公式の訪問ではなく、お忍び訪問なのでアリザスには連絡してなかったんだよね。
連絡したら大袈裟に迎え入れられてしまうから。
なので、私とお兄様の今の衣装は庶民ルックである。
ドレスと違って動き易い町娘スタイルは私のお気に入りだ。
「アリザス、今日はお忍びで見学に来ただけだから、気を使わないでちょうだい」
「そうは仰られても……この後、是非とも我が家でお茶など召し上がってください。妻の焼いたシフォンケーキが絶品なのです」
アザリスは何としても家に来て欲しいらしい。
シフォンケーキか、ふわふわしてて美味しいのかな。
私、この世界ではまだ飯テロしてないんだよね、と思い出す。
この領地って、お料理がなかなか美味しいから、飯テロまでたどり着いてない。
「アリーシャがシフォンケーキを食べたそうだから、お邪魔しようか」
なぜバレた。
「そうですわね」
シフォンケーキにつられた訳じゃないのよ、って顔で頷いた。
「では、ご案内致します」
ホクホク顔で私達を案内し始めたアザリスの後を歩き出した。
途中、ペースが遅れがちになった私は、ちゃっかりヨヒアムに回収される。
ヨヒアムの腕に座るようにして抱かれ、アザリスの自宅へとたどり着いた。
庭付きの大きめなお家は、ヨヒアムの奥さんの趣味なのか、可愛い感じに仕上がっていた。
「マレーナ、マレーナ! アリーシャお嬢様達がいらっしゃったぞ」
奥さんの名前を呼びながら、勢いよく家に入っていくアザリス。
「まあまあまあ、ようこそいらっしゃいました。狭い所ですがお入りください」
奥から出てきたエプロン姿の可愛らしい女性が、マレーナなのだろう。
「急に押しかけてすまない。アザリスが誘ってくれたのでやってきた。辺境伯領次期当主ジオルドだ」
お兄様は礼儀正しく挨拶する。
「アザリスの妻、マレーナでございます。来ていただいて光栄ですわ」
「辺境伯領長女のアリーシャよ」
ヨヒアムに下ろしてもらい、膨らんでいないスカートの裾を少し持ち上げカテーシする。
「まぁ、なんて愛らしいお嬢様なんでしょう」
マレーナの私を見る目がキラキラ輝いてる。
あれ、前にもこんなのなかったかしら?




