贈り物なんて呪いでしかない2
お母様達が出ていって、暫くするとキャサリンが夕飯をワゴンに乗せてやってきた。
「料理長が、消化にいい食事を用意してくれましたよ、お嬢様」
笑顔で、サーブしてくれるキャサリン。
「そう。手間をかけてしまったのね」
「いえ、料理長はお嬢様が大好きですからね。喜んで作っていましたよ」
キャサリンは料理長の姿を思い出したのかクスリと笑う。
料理長とは、マヨネーズ開発の時に意気投合して以来仲良しだ。
地球の記憶を持っているのに、マヨネーズとケチャップは外せない。
おかげで我が家の料理の広がったと思う。
お醤油とお味噌も欲しいところだけれど、それにはまだ出会えていないんだよね。
料理長の作ってくれたふわとろオムレツと、カボチャのスープを美味しくいただく。
もちろん、このパンも葡萄の酵母から作ってふわふわのパンを開発した。
手でちぎってパンを口に入れると咀嚼する。
以前の硬いパンから解放された事で食事も楽しくなったよね。
今回思い出した騎士の記憶は、どんな風に役に立つのかな? とふと思う。
この小さな手じゃ、剣を振り回すのも大変な気がするのよね。
そもそも体力が無いから、先ずは基礎体力作りからかな。
剣を振り回せるようになるのは、きっとその後だろう。
明日から、早速体力だね。
騎士の頃の記憶を頼りに、メニューを作ろう。
せっかく思い出したんだから、しっかりと活用する気満々である。
王弟で辺境伯であるお父様のおかげで、うちは中々に裕福な家庭なのもありがたい。
色々なことにチャレンジするにも、それなりにお金はいるものだからね。
そもそも現王の実弟が何故隣国と接する辺境なんかに居るのかと言うと、今の王様であるお父様のお兄様との権力争いを避けるためだったらしい。
元の西の辺境伯家は、相次いで後継者候補を亡くして、跡取りの居ないまま年老いていたのだと言う。
隣国からの侵略に対しての防波堤の役割を担う辺境伯領に信頼できる後継候補が居ない現状を事を危惧したお父様は、今後の望まない権力争いから脱却する好機だと判断して、王太子が王様に即位するタイミングで、臣籍降下して元辺境伯と養子縁組をしたのだそうな。
そして、それ以来、辺境伯領を守っている。
貴族派閥による権力争いはあったものの、王様とお父様の中は至って良好なんだけどね。
王様からは何かある事に私達へのプレゼントなどが届いたり、季節の挨拶の手紙なども届くぐらいには仲が良い。
いつの時代も利権を狙った欲深い人達のせいで、無駄な争いが起こるものだ。
お父様が辺境伯になって以来、その人達は鳴りを潜めてはいるけれど、彼らの野心が消えたわけではないのだそうな。