王都と書いてまきょうと読む18
お店の中に入ると、色とりどりのドレスやスーツが展示されていた。
「ようこそいらっしゃいませ。シルバード様」
デザイナーらしき人が恭しく出迎えてくれる。
「少し見せてもらうよ」
「はい。お気に入りの物が見つかりましたら、別室にお運び致しますのでお申し付けください」
「ああ」
「まぁ、この愛らしいお方はご令嬢ですか?」
まぁまぁまぁ、と目をきらきらさせて近寄ってくるデザイナーに、一歩後ろに下がる。
「そうだ。長女のアリーシャだ」
「初めまして、お嬢様、デザイナーのシーバでございます。以後お見知り置きを」
「アリーシャ・ブランシェットよ」
「まぁ、お声まで愛らしい。マギアナ様によく似ていらっしゃいますね。ビスクドールの様にお可愛らしいお嬢様に創作意欲が溢れます」
グイグイくるシーバに、デザイナーって変な人が多いのかしらと首を傾げる。
目が血走ってて怖いからね!
「シーバは相変わらずなのだな」
店の前で出迎えてくれた紳士にお父様は苦笑いをうかべる。
「はい。いつもと変わらず通常運転です」
諦めたような彼の顔には少し浮かれが見て取れた。
どうやら、シーバという人は、昔からこんな人らしい。
「私、小物が見たいわ」
「では、こちらへどうぞ」
シーバのその言葉にお父様を見上げると、
「行っておいで。食べられたりはしないよ」
とそっと背中を押された。
「キャサリン行こう」
シーバに1人で着いて行く勇気はなかった。
「はい、お嬢様」
キャサリンは口角をゆるりと上げると、後ろから着いてきてくれる。
「こちらが帽子、手袋、扇子などです」
洗練されたデザインが並んでいた。
辺境伯領にはないセンスだよね。
「お母様に似合うのはどれかしらね?帽子と扇子が欲しいわ」
「お嬢様、よろしければ手に取って見てくださいませ。これなどは今年の流行のデザインでございます」
シーバが手渡してくれたのは、つば広の鮮やかな赤色の帽子。
前のつばが大きく上にカーブしていて、側面に薔薇を型どった飾りコサージュが付いている。
「赤は違うのよねぇ。もう少し優しい色はないかしら?」
「では、このアイボリーなどいかがですか?」
今度は目に優しい色だった。
お庭を散歩するお母様を想像して……。
うん、これは似合うかもしれない。
「キャサリンどう? お母様のお洋服に合うかしら?」
「はい。お似合いになると思います」
「なら、これを。それと、そちらの扇子を2個。後は、男の子用の小物はないかしら?」
お兄様には何を買おうかしら。
「こちらのクラバットなどいかがですか?」
「まぁ、素敵な色ね。お兄様に似合いそう」
鮮やかなブルーのクラバットに目を引かれた。
「おぼっちゃまなら、こちらの白色と緑色もよろしいかと」
キャサリンに進められ、
「では、この3種類をちょうだい」
と即決する。
2人へのお土産が決まった事に安堵する。




