王都と書いてまきょうと読む10
「彼と色々な会話をして、この1ヶ月の彼を見て、そして渡すと決めたんだよ」
「はい」
「アリーシャが言うように、あれはもしもが有った場合に保険となるだろう。一度使ってしまえば崩れて壊れる物だと伝えておいたよ。そして、宝石の出処もその存在も秘すると約束も取り付けた」
「お父様、ありがとうございます」
沢山作りすぎた付与魔法をかけた宝石も、帰ったら渡しますね。
心の中で、驚くお父様を想像する。
「陛下にも、会議前に2人きりになれたので、指輪を渡した。出処を大変お気になさってはいたが、喜んで受け取ってくれたよ」
「それは良かったです。出処については黙秘の一点張りですね」
くすりと笑う。
「アリーシャの能力は、辺境伯領以外には絶対に出さない。欲深い奴らに目を付けられては困るからね」
「はい。そんな事になれば、また神様が来ちゃいそうですし」
例え話ではなく、あの神様は本当に来そうだから。
「それはもう勘弁願いたいね。神に会うだなんてことはそうそうあっては困る」
困った顔になるお父様。
私、もう3回会いましたけどね。
しかもノリが軽いから、また来そうな気がする。
「さぁ、大分と夜も更けてしまった。明日は非公式で王達との対面があるから、アリーシャはそろそろ寝た方が良いだろう」
「……はい」
やっぱり会わないって選択はないですよね。
朝早くから起こされて、キャサリンに飾り立てられるんだろうなぁ。
窮屈なドレスを着て、緊張した空気の場所へ行く。
あ~書庫に引きこもりたい。
「可愛い我が娘、今日はゆっくりと休むようにな」
隣までやって来たお父様が、私を抱き上げベッドまで運んでくれた。
「お父様もゆっくりお過ごしください」
「久しぶりの柔らかいベッドだから、夢も見ずに眠れるだろう。おやすみ」
「おやすみなさい、お父様」
額にキスを落としたお父様の頬にキスを返した。
胸元まで布団をかけてもらい、ふかふかの枕に頭を沈めた。
温まっていく体は、眠気を誘ってくる。
ゆっくりと目を瞑ると、お父様の去っていく足音だけが聞こえる。
「おやすみなさいませ、お嬢様」
キャサリンの声に「おやすみなさい」を返そうと声を出すが、遠のく意識がそれを邪魔した。
静かに消された照明、カーテンから差し込む月の光だけが部屋を優しく照らしていた。