王都と書いてまきょうと読む6
あの日以来、クリスホードとは気安く話す仲になった。
それは、あくまでもクリスホード側の主観ではあるが。
秘密を抱える私としては、どこかでぼろが出ないかと常に冷や冷やしていたのではあるが。
他国のそれも、隣国のクリスホードにバレていい秘密は1つとしてないからだ。
でも、自分の知らない話にわくわくしたのも事実で。
まぁ、年の離れたお友達には慣れたような気はする。
王都までの道のりは順調に進んだ、残すところ後一日で到着する予定だ。
街の宿に泊まる時もあれば、水場に近い場所で野営する事もあった。
野党や盗賊なんかが襲撃してくる事は一切無かった。
最強と歌われる辺境伯領の旗をたなびかせる集団に、簡単に手を出すバカは居なかったみたい。
そんな中、隣国に女神の神託が下った。
その知らせは各国が忍ばせていた密偵の手によって瞬く間に、近隣諸国に広がった。
王位にクリスホードを、という声は国内で日増しに大きくなっていると言う。
それに反発する兄王子は、何としても自分が王位につくのだと強硬な姿勢を崩していない。
女神の声にも耳を傾けない愚か者の末路は、決まっているというのに。
無駄な足掻きをする兄王子の周囲から、人の流出が止まらないのは仕方ないだろう。
隣国の各地で民が決起し、首都へと向かっていると報告があった。
私達が王都に到着する頃には、状況はもっと切迫したものになっているに違いない。
「クリスホード様の到着に合わせ、周辺諸国との会談が組まれております。それが済み次第、兄王子討伐に向け秘密裏に結成された組織の旗印として、出陣する手筈となるはずです」
深刻な顔をしたお父様がクリスホードを見た。
貸切にした宿屋の食堂に私達は集まっている。
何度かこんな風に話し合いをしてきたが、未だかつて無いほどに緊張した空気が部屋を支配していた。
「ああ、分かっているよ。僕は民の為に尽力すると誓うよ」
「敵はもう既に背水の陣、激しい戦いになるでしょう」
「それでも、負ける訳にはいかない。僕の為に国で動いてくれている者達の為にも、平和を望む民の為にも」
覚悟はもう決めてると言う顔でクリスホードはお父様を真っ直ぐに見つめる。
「我々がお力を貸せるのは王都に着くまでですが、クリスホード様の勝利を切に願っております」
「辺境伯には世話になったね。ご令嬢共楽しい時間を過ごさせていただいた。礼を言う」
「勿体なきお言葉にございます」
「聡明なご令嬢との会話はとても為になった。僕が生きてきて一番充実していた1ヶ月だったよ」
そこまで言われる程の会話をしただろうか。
「私も楽しかったです。隣国のお話は為になりました」
風土の違う国の話は楽しかった。
うちにない食物などにも興味が湧いたのは間違いない。
「我が国を平定して平和になった暁には、是非とも我が国を訪れて欲しい」
「その時には是非とも」
いつか、そんな日が来ればいいと思う。
「ああ、その時は君に我が国案内しよう」
満面の笑みを浮かべたクリスホードには、もう迷いはなかった。
そして、隣国を訪れると言う約束は遠い未来に実現させる事になる。
いつも読んでくださりありがとうございます(⁎-ω-⁎))"ペコンチョ
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