王都と書いてまきょうと読む4
朝食を終え、各自最後の準備を済ませると、玄関ポーチへと集まった。
うちで一番の大型の4頭立ての馬車が1台と、幌を被せた荷物を運ぶ貨物馬車が5台。
その他には既に馬に騎乗した騎士団の面々が待機している。
中々の大所帯だね。
生まれて初めての長旅にわくわくしてる私が居た。
お父様の愛馬が立派な鞍を背負い、馬番に綱をひかれていた。
ヨヒアムは今回、私の乗る馬車の御者台に御者と一緒に乗る手筈になっている。
「貴方、王都までは長旅になりますが気をつけてくださいませ」
「ああ。留守を頼む」
「アリーシャはお父様の言う事をよく聞いて、無茶はしないようにするのですよ」
「はい、お母様」
何も無ければ無茶はしません。
「アリーシャ、お兄様の顔を忘れないでね」
「そんな簡単に忘れるはずないですよ、お兄様」
寂しそうにお兄様は私の手を握ったので、しっかりと握り返しておいた。
「クリスホード王子殿下、お国が一日も早く平定されますようお祈り申し上げます」
「世話になったね、辺境伯夫人。わたしも一日早い平定の為に尽力すると誓うよ」
「御身を大切になさってくださいまし」
お母様は深々と頭を下げた。
「では、行こうか」
お父様の言葉に、全てが動き出す。
私はキャサリンに抱き抱えられ、馬車へと向かう。
その後ろをクリスホードがやってくる。
ちなみにクリスホードの侍従者2名は、騎士に変装してる。
侍従役のクリスホードに、侍従者が付くのはおかしいので、あくまで私の警護の騎士として付き添う予定になっていた。
「王都に向けて出立!」
愛馬に跨ったお父様の号令と共に、馬に鞭が入れられた。
騎士団に挟まれる様にして馬車も動き出した。
私は馬車の窓から、見送りのお母様達に手を振る。
「行ってきまーす」
「「「行ってらっしゃいませ」」」
屋敷の皆が大きくてを振り返してくれた。
お母様とお兄様が、どんどん、小さくなっていく。
それにつれて、心細さも増していた。
今、別れたばかりなのに、寂しくて仕方ない。
6歳児の私がそう訴えてくる。
気合気合……初めての長旅を楽しもうじゃないか。
キャサリンが持ち込んでくれていた沢山のクッションに、ゆったりと身体を預ける。
遠出用の豪華な馬車は、乗り心地がいい。
私の考案した衝撃吸収のスプリングがよく生かされてる。
うんうん、モルト達に感謝だね。
「アリーシャ嬢」
対面から声をかけられて視線を向ける。
「はい。クリスホード王子殿下」
「クリスでいいよ。僕は当面君の侍従者だからね」
「それでは、クリス様と」
流石に隣国の王子を、呼び捨ては出来ませんて。




