王都と書いてまきょうと読む3
眠い……昨日の夜張り切りすぎた。
指輪と宝石と、お父様達のアクセサリーは夕飯を終え自室に戻ると既に届けられていたんだよね。
王様用の指輪に、宝石を埋め込む作業に少し時間をかけてしまった。
どうしても、指輪と一体化になる様にしたかったんだもん。
引っかかりもなく、滑らかな手触りを目指したら、思いの外時間かかっちゃって。
王様の指輪に聖魔法の防御と解毒を付け終えた後、もちろん形状変化も付けた。
それからお父様達のアイテムにも解毒を施し、キャサリンとヨヒアムから一度返却してもらったアイテムにも解毒を付けた。
そしたら、楽しくなっちゃって、更にテンションまで上がって。
気が付いたら、手元にあった宝石に色々付与してた。
火、風、土、水、氷の魔法を使える様になる魔石が出来上がってたんだよねー。
ま、お父様に丸投げしちゃお。
「ふぁぁ」
口元に手を当て欠伸をする。
「お嬢様、せっかく綺麗に着飾ったんですから、しゃきっとしてくださいませ」
「分かってるけど、眠いのです」
「昨日、遅くまで起きていらっしゃったのですね」
呆れ顔のキャサリンに、
「えへへ」
と肩を竦めた。
キャサリンと共にダイニングルームにつくと、家族が既に集まっていた。
一つ席が多いのは、侍従者の格好をしたクリスホードが居るからだ。
長くて綺麗な銀髪を背後で一括りにして、いかにも仕事が出来そうな丸眼鏡をかけた侍従者姿も様になっていた。
隠しきれないオーラは、王族のそれなのだろう。
「おはようございます」
「おはよう、アリーシャ」
お兄様が笑顔で手を振ってくれる。
「アリーシャ、おはよう。さぁ、早く席につきなさい」
「はい、お父様」
頷いていつもの席へと向かう。
お母様の隣が私の定位置だ。
「アリーシャ、眠そうね。昨日、遅くまで起きていたのね」
困った子、と言いたげな視線を向けたお母様。
「そ、そんな事はないです」
語尾が小さくなってしまったのは、私が嘘が苦手な証拠だ。
「私が無理を頼んでしまったからだろうか?」
「あ、それは違います。お願いされた件は直ぐに終わりました」
申し訳なさそうに聞いてきたお父様に、それのせいでは無いときっぱりと告げる。
テンションの上がった私が調子に乗ってしまっただけだもの。
「出発前に全てお渡ししますね」
クリスホードに話の内容がバレないように、細心の注意を払って言葉にする。
「分かった。それでは朝食にしよう」
お父様は頷くと、壁際に控えていたメイドに目配せをした。
今度、家族4人が揃うのは上手く行けば、2ヶ月後だろうか。
辺境伯領から王都までは、馬車で1ヶ月程かかる。
往復を考えても2ヶ月。
少し心細くなるのは、6歳児の私。
クリスホードを送り届け、一日でも早く帰ってきたいものである。