王都と書いてまきょうと読む2
「王都に向かうのは私とアリーシャ。それからヨヒアムとキャサリン。後は一個中隊を連れていく予定だ。ジオルドとマギアナは留守を頼む。まだ隣国との問題が解決した訳ではないので、気を引き締めるように。砦の指揮はオスカーに任せる」
「わかりました。貴方もアリーシャもくれぐれも無理はしないでくださいまし」
心配そうに頷いたお母様。
「アリーシャと一緒に行けないのは寂しいけれど、留守は僕が守ります」
次期当主の顔で胸を張ったお兄様。
隣国が落ち着いていないのに、砦を守る辺境伯家が全員するにする訳にはいかないもんね。
「アリーシャは、弟王子と同じ馬車に乗る事になるが、行儀よくしていられるかい?」
「ええ、お父様。アリーシャは大人しくしています」
知らない人と同じ馬車に長時間は苦痛なんだけど、それも言ってられない状況だし。
「いい子だ。キャサリンにも同乗させるから、頑張ってくれ」
ぽんぽんと頭を撫でられた。
まぁ、イケメン鑑賞でもしておきますよ。
それと、馬車の中で読む書物も忘れないようにしないとね。
「アリーシャ、一つ頼みがあるのだがいいかい?」
私を抱き上げたお父様が顔を覗き込んでくる。
「なんですか? お父様」
「申し訳ないが、これと同じ物をもう一つ作れるかい?」
お父様は、私のプレゼントした指輪をした指を伸ばした。
「はい。指輪と媒体にする宝石があれば直ぐに作れますよ」
「そうか。指輪と宝石は後程部屋に届けさせよう」
「どなたに送るのか聞いてもよろしくて?」
「兄に、王に送りたいのだよ。もちろんアーティファクトは特別なルートで仕入れたと話すので、アリーシャが作ったも物だとはバレないようにするつもりだ」
少し恥ずかしそうに笑ったお父様。
お父様と王様は仲が大変よろしいですものね。
「それでは特別に素敵な物を作らなければいけませんね」
「ああ、頼む。今回の件で、王は近隣諸国の者達と渡り合う事になるだろう。だから、護りを万全にしておきたい」
「では、聖魔法の防御に加えて、毒の浄化も入れておきましょう」
最近、解毒魔法も見つけたんだよね。
早速役に立つなんて。
「解毒まで、取得したのか」
「お屋敷に篭ってばっかりだったので、書物を読み漁りました」
驚き顔のお父様に胸を張った。
「……まったく、アリーシャは規格外すぎる」
額に手を当て溜め息を漏らしたお父様。
「あ、お父様達にお渡ししたものも一度、私に戻してくださいませ。解毒を付与します」
私の家族は私が守る。
その為に力の出し惜しみはしないんだよね。
「分かった。それも合わせて部屋に運ばせよう」
お父様の声が何処と無く諦め混じりだったのは、気付かないふりをした。




