王都と書いてまきょうと読む1
翌日、砦に戻ったお父様達は、砦近くで身を潜めていた隣国の弟王子一派と接触を測った。
人道的支援を名目に、弟王子達を砦に匿う事に成功した。
そして、神様の言っていた4日後になり、我がクルドラシル王国を含む隣国周辺の首脳陣と教会の司祭達に女神からの神託が下った。
その知らせは早馬で辺境伯領にも届いた。
たまたま……そういう事にして、弟王子を保護している事を王都からの使者へと告げると、使者は慌てて王都へと折って帰った。
どの国よりも一足先に優位に立った我が国。
国王陛下から、秘密裏に弟王子を王都へ連れてくる事を指示された。
そこからは怒涛の様に準備は整えられた。
名目上、私の6歳の誕生日を祝いたいので登城する様にと言う王印の押された招待状が届けられたのだ。
巻き込まれである。
いや、でも、事の発端は私を心配した神様が整えた事だから、王様も巻き込まれた側なのかも知れない。
隣国の弟王子は、私の侍従者に変装して同じ馬車に乗る手筈になっている。
正直、見知らぬ人と同じ空間とか苦痛でしか無いのだけれど。
今夜、弟王子は砦から屋敷まで移動してくる手筈になっているから、顔合わせは出来るんだけど、それでも知らない人に変わりはないのよね。
「ようこそおいでくださりました」
お母様の言葉に、合わせて後ろに控えていた私とお兄様も丁寧に頭を下げる。
お父様と共にやってきた弟王子と共の2人を応接室で出迎えた。
「楽にしてくれ。クリスホード・レブランシア。隣国の弟王子だ。此度は迷惑をかける」
クリスホードが深く被っていたローブのフードを外すと、白銀の長く艶やかな髪がさらりと溢れた。
切れ長の細い瞳は海を映す様なブルーで、優しげに微笑む彼は、かなり美丈夫だった。
うちのお父様もお兄様も、イケメンの部類に入るけど、この人は更に上をいくわねー。
ただ、争いなんて出来ません! って感じの線の細い人だ。
こんな人が王位争奪の中心に居るだなんて、なんともご愁傷さまだね。
「妻のマギアナと息子のジオルド、そして愛娘のアリーシャです」
紹介してくれたお父様の言葉に合わせ、カテーシを披露する。
「よろしく頼むよ」
思っていたよりも気さくな方なのだろう。
「明日、王都に向かいますが、名目上、我が娘の誕生日を祝う為と言う招待を受けての事。クリス様には窮屈を感じさせてしまうかも知れませんが、娘の侍従者に扮していただきたいと思っております」
「問題ない。こちらは命を守って貰ったのだ、そちらの指示に従おう」
クリスホードは躊躇うこと無く頷いた。
「一先ず顔合わせはこれぐらいにしましょう。今夜は屋敷にお部屋をご用意させて頂いております。お食事もそちらへと運ばせますので、疲れた体をお休め下さい」
「ありがたい」
「共の方もお部屋に案内させるので休まれよ。セバステン、案内を頼む」
「はい、旦那様。弟王子様、皆様、ご案内させて頂きます」
お父様の目配せを受けセバステンは一歩前に出ると、クリスホード達に向かって恭しくお辞儀をした。