再び神様参上!2
その時々の人生において、優先する物は違ってくる。
騎士としての人生は、主君を守る、ただそれだけに生きていた。
女子高生の人生は、スケボーをこよなく愛し、ただ我武者羅に頂点を目指した。
そして、今世の人生は、辺境伯領の長女として、領民の幸せを願い、領地の発展に尽力していきたいと。
大きくなれば何れどこかに、政略的な意味を込めて、私はお嫁に行くだろうと思う。
けれど、それまでにはまだ時間がたっぷりあって。
辺境伯領の姫としての私は、まだまだこの領地に尽くす事が出来るんだ。
神様のくれた呪いの様なプレゼントを、せっかくなんだから有効活用していきたい。
合理的に考えて使わなきゃ勿体ないよねぇ。
それにしても……この膠着状態を、何とかする方法はないんだろうか。
「お嬢様、難しいお顔で考え込んでばかりいらっしゃらないで、スイーツでも召し上がってくださいませ。料理長から試作品をお預かりしてきました」
キャサリンがテーブルに置いてくれたスイーツはお芋のモンブラン。
「わぁ、シェフが作ってくれたのね」
秋に収穫した芋でモンブランを作れないかと、料理長に相談していたんだよね。
溢れるように盛られたそれをスプーンですくい上げ口に入れる。
「甘くて美味しい。流石料理長ね」
頬に手を当て味を堪能する。
滑らかな舌触りに、適度な甘み。
これぞ、モンブランの真髄。
ま、そこまで言うとオーバーかな。
「それはようございました。料理長をお喜びになりますよ」
「キャサリンとヨヒアムも、後で頂くといいわ」
「ええ、そうさせていただきます」
満面の笑みを浮かべたキャサリンも、実は甘党である。
「料理長には、これを完成品としてもよいと伝えてちょうだい。ぜひ、お母様やお兄様にも召し上がっていただきたいわ」
「かしこまりました」
丁寧にお辞儀をするとキャサリンは部屋を出ていく。
美味しい物は皆で分かち合いたい。
出来ればお父様にも召し上がって欲しかったけれど。
一日も早く、平和な日々を取り戻したいな。
争いの火種が一日でも早く取り除かれますように!
神様頑張ってくださいよ。
「呼んだ? 」
「へっ?」
「やぁ、神様だよ。お久しぶり」
目の前に浮かび上がった光の玉を見えないふりしたのは仕方ないと思う。
「見えてるよね! ねね!」
光の玉は私の目の前で大袈裟なほど左右に揺れる。
「お嬢様!」
焦った顔のヨヒアムが剣を抜き、鬼気迫る勢いで駆け寄ってくる。
危ないから、それ、しまって!!!
声にならない悲鳴をあげた私は悪くないと思う。