再び神様参上!1
あれから3日が経った。
お父様はまだ砦から帰ってこない。
砦近くに現れた隣国の集団は、無理やり超えて来る気配はないそうだ。
それでもまだ周辺をウロウロしている為、警戒態勢を解けずにいる。
山側からこちら側にやってこようとした人影は、長く続く高い壁に阻まれ来た道を戻って行ったと、砦の監視塔からの報告があった。
壁を早く作って良かったと心から思えた。
間に合ってなかったらと思うと、ぞっとする。
そりゃあ、来た人が悪い人だとは限らないけれど、正攻法で来ない人物が普通の人だとも思えない。
それに難民だろうと何だろうと、他国の人間には変わりないし、領民を優先して守るのは当たり前の事だもん。
おじい様とおばあ様には、屋敷に戻った翌日にうちの騎士団員と入れ替えで戻ってきたモスリード達と共にご自宅へお帰り願った。
もし万が一敵が来たら、御身を危険に晒してしまう事になるからとお母様が説得した。
おじい様は渋った。
駄々っ子みたいに帰りたくないと渋ったのだ。
おばあ様の鶴の一声で、後ろ髪を引かれながらも馬車に乗り込んで行ったおじい様の背中が寂しそうだったのは仕方ないだろう。
前国王陛下の身に何かあれば、我が家だけの問題じゃ無くなってくる。
それはそれでとても困るのだ。
辺境伯領全体に、夜間外出禁止令と隣国の人間が紛れ込むかも知れないので警戒する様にと通達は出しているが、あまりその期間が長いと領民にも不平不満が出てしまう。
一週間……長くても二週間が限界なんじゃないかと思う。
行動が制限されていると精神的に参ってしまうものだから。
隣国のおバカめ! こちらに迷惑かけてこないでよね。
6歳児の私はそろそろお父様あいたいのだ。
それを邪魔してる隣国の人は、敵でしかない。
「あ~暇だな」
自室のソファーにぐったりと項垂れる。
水車や壁を作る様なわくわくした目標が欲しい今日この頃であった
「お嬢様、お行儀が悪いですよ」
室内の片付けをしながらキャサリンが言う。
「だって」
退屈なんだよ、頬を膨らませ不満混じりの溜息をつく。
外出禁止の厳戒令が敷かれていて、村にも行けないんじゃ、退屈にもなる。
「お嬢様、スケボーパークにでも行かれてはどうですか?」
ヨヒアムの提案に、
「それもまた違うのよね」
と思案顔になる。
16歳の私は明けても暮れてもスケボーを楽しんでいたし、スケボーパークで暮らしたいとさえ思っていた時期はあった。
でも転生して別の人格になり、もう一つの前世を思い出した今は、そこまでの熱量は無い。
スケボーが好きなのには分かりがないが、それはあくまでも趣味の領域で。
今の私が一番楽しいと思うのは、やっぱり領地の改革なんだろうな、と改めて思った。




