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漂い始めた不穏な気配15


関係が燻りあってるうちに来ようとするなんて、どうゆうつもりだよ。


敵の敵は味方とか、安易に思ってるんじゃないでしょうね。


あわよくば、うちが強硬派と戦ってくれないか、等と思っている馬鹿な策士がいたら、はっ倒す。



「おじい様」


今すぐ、村の壁を完成させたい! それを瞳に込める。


「そうだな、うん、そうなるの」


おじい様は私の視線の意味に気づき、くすりと笑って頷いた。



「辺境伯には、状況は分かったと伝えよ。こちらの計画を直ちに完成させ、警戒の為の騎士を置いて我らは屋敷に撤退する」


「えぇ」


撤退は、思ってたのと違う。


不服そうに抗議したのに、一瞥をくれるだけで無視された。



「かしこまりました。それでは御前失礼致します」


カステッドも苦笑いで私を見たものの、おじい様に一礼して来た時と同じ様に機敏な動きで部屋を出ていった。



「アリーシャ、今言った通り壁は完成させるが、その後我らは撤退だ」


おじい様の顔は統治者のそれで、私の意見は聞いていないと言われている様に思えた。



「はい、おじい様」


村の皆が心配でも、6歳児の私がここに残るべきじゃない。


それは痛いほど分かった。


分かってはいても……いや、壁を完成させずに撤退する事も出来たのに、おじい様はそこは譲歩してくれた。


だから、今度は私が譲歩する番なんだ。




「モスリード、騎士団を半分こちらに残す手配を。辺境伯の小隊は全て残留。その他の者は撤退の準備を急げ。ヨヒアムとキャサリンは、アリーシャに着け、直ぐに壁の建設に向かう」


おじい様の声が響く。


「「「かしこまりました」」」


モスリード、ヨヒアム、キャサリンは、素早く一礼すると動き出す。



「アリーシャ、我らも行くぞ」


「はい。直ぐにローブを着てまいります」


私はしっかりと頷くと、2階へと駆け上がる。


キャサリンが後を着いてくる気配を感じた。







ローブの裾をたなびかせながら目的へと向かう。


おじい様の前に座るのは、もうすっかり定位置だ。



昼間の黒いローブは、なんとも怪しい組織に思えるが、今はそんな事を言ってる場合ではないだろう。




村の住人には、家に篭もる様に言っておいたおかげか目的に着くまで誰ともすれ違う事は無かった。


もちろん、現場にも誰の姿もない。



念の為、魔力を周囲に這わせ確認したが、人の気配は無かった。



「おじい様、最後の仕上げを行います」


「あい分かった」


皆と少し離れ、この4日間ですっかり慣れた魔力操作に意識を集中した。



「ウォール」


呪文を唱えれば、地響きとともに高い壁が次々とせり上がってきた。


通行する場所を除き、壁に囲われた事を確認すると、私は魔力の出力を止める。



「5日間、よく頑張ったのぉ。自慢の孫娘じゃ」


いつの間にか背後に来ていたおじい様が、優しく頭を撫でてくれた。



ほっと安堵の息を吐く。


どうか、この壁が住人達を守ってくれますように。









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