漂い始めた不穏な気配13
リビングのテーブルに向かい合わせに座る私とおじい様の表情は硬い。
キャサリンが用意してくれた紅茶を飲みながら、残りの壁を夜中とは言わず、今完成させてしまうべきだろうか。
壁で囲い終える事が出来れば、この周辺の安全は保証される。
入口だけを警戒すれば良くなる分、騎士達の負担も減らせるだろうし。
何より、前国王陛下であるおじい様の身の安全を最優先するのならば、囲いを早く作り上げるか、それともここからの撤退か。
なんなら、砦に行って敵の殲滅とかってのも、あるかないかで言えばありだよね。
死者が余りでないように風魔法でちょちょいって。
警鐘はまだ鳴り響いてる。
本当に、何があったんだろう。
お父様はご無事だろうか。
「アリーシャ、そんな心配そうな顔をしなくてもよい。おぬしの父親はあー見えて中々強いからの」
私を元気づけようとしてくれる。
色々と考え込んでしまったせいで、不安そうに見たんだろうな。
実はそこまで深刻に考えて無かったとは言えない。
「はい、おじい様。お父様はお強いです」
しっかりと頷いた。
「幼いアリーシャがこんな事にまきこまれてしまうとはのぉ。とにかくわしが着いておるからのあまり不安がるな」
私をそんな不憫そうに見なくてもいいんですよ。
「前国王陛下、失礼を承知で伝えさせて頂きたいのですが」
「うむ」
「我が敬愛すべきお嬢様は、そこまで深刻にお考えにはなっておられないかと」
「……な、なんだと」
キャサリンの言葉に私を見るおじい様の視線が、先程までとは変わる。
「今のうちに壁を完成させようか。なんなら敵の殲滅に行きたいとか、そのような事を考えていたのでは無いかと思われます」
キャサリン……当たってる、当たってるけど。
おじい様に告げ口しなくてもいいじゃないか。
「……えへへっ」
こちらを見る2人の視線に耐えきれなくなったので、ぎこちなく微笑んだ。
「はぁ……そうだな。アリーシャは普通の6歳児と違うことを忘れておったわ」
ガハハと大きな口を開けて笑うおじい様には、先程までの緊張は残っていない。
「その時々で一番有効な事を考えるのが好きなのです」
遊び半分に考えていた訳では無い事だけは伝えておいた。
「キャサリンと言ったか?おぬしのおかげで肩の力が抜けた、助かった」
壁際に戻ったキャサリンに向かっておじい様が微笑む。
キャサリンは「滅相もございません」と頭を下げる。
張り詰めていた空気が軽くなった事で、息がとても吸いやすくなったことは間違いないよね。
流石キャサリン、うちの自慢のメイドだよ。