漂い始めた不穏な気配8
夕飯を取り、村の皆が寝静まった頃、私達は動き出した。
闇に隠れる為に用意した真っ黒なローブを身に纏ったのは5人。
私とヨヒアム、キャサリンとおじい様、そしておじい様の所の騎士団長であるモルスリード。
秘密保持の出来るメンバーだけで構成された。
うちの一個小隊には、おじい様の所の騎士団や、村の者達に、私のする事がバレないように情報操作と見張りを頼んでいる。
おじい様の騎士団には、私達が向かう場所とは反対側の見張りを任せた。
ぺトラス達に頼んで壁を作る計画は住人達に知らせて貰ってはいるが、それが何時でき、誰が作るのかは伝えられていない。
本当の事を知る者が少なれけば少ないほど、情報漏洩も少なくなるからだ。
「皆、準備はいいかしら? 裏口から静かに外に出ましょう」
4人の顔を確認し、ローブのフードを目深に被り、裏口に向かって歩いていく。
玄関のある広場には、警備要員に回っていない騎士達がテントを張っている。
林に隣接した裏口に、見張りを配置しないようにおじい様とヨヒアムが配慮してくれていた。
ドアを開けると、月明かりを頼りに足を踏み出した。
サクサクと言う草を踏みしめる小さな音が響く。
松明を着けるのはもう少し離れてからしか出来なさそうだ。
照明器具のない世界は、漆黒で溢れている。
足場が悪すぎて、足を取られそうになる。
「アリーシャ、わしが抱いて行こうか」
ちまちまと歩く私を見かねたおじい様に声をかけられた。
ごめん、遅かったんだね。
ほら、身長差があるし、6歳児のリーチは短いのです。
「おじい様、お願いします」
流石に意地を張って迷惑はかけられない。
「よし、じぃじの抱っこだ」
小声なのにやたらと嬉しそうな声に聞こえたよ、おじい様。
私をあっさりと抱き上げたおじい様が、緊張感のない顔で微笑んでた。
おじい様を挟むように、左右にヨヒアムとモルスリード、背後を守る様にキャサリンが付き従う。
30分ぐらい歩いて、ヨヒアムが予め昼間に馬を繋いでおいた場所へと到着する。
「ここから馬で向かいましょう。目的地まではこの光を目標に進んでくださいませ。ホーリー」
私は掌の上にソフトボール代の光の玉を出現させる。
これぐらいあれば、目視しやすいでしょ。
「あい、わかった。」
おじい様は私を抱いたまま、ひょいと馬に飛び乗った。
前国王陛下なのに、おじい様は中々アクティブである。
掌の光の玉に向かって念じる。
思い浮かべた地図、その場所へと向かう道標となれと。
光の玉はチカチカ光ると、意志を持った様に高く浮上した。
私の魔力が私の思う様にスピードを上げ目的地へと向かい始める。
おじい様を先頭にそれを追い掛けるように馬達は走り出した。