漂い始めた不穏な気配6
「本格的なログハウスだ」
目の前に建ってるログハウスに目を奪われる。
ここは私も初見だから、驚いてしまった。
二階建ての大きなログハウスには、テラスも付いていて、カントリー感たっぷりだ。
周囲に家がないから余計に大きく感じる。
ま、それはあくまでも地球に住んでた庶民の感覚である。
「ふむ、今日からここが寝泊まりする場所だな」
「おじい様には少し狭いかも知れませんが、壁作りの間は我慢してくださいませ」
「もちろんだとも」
普段はお城やお屋敷の大きな物件に住んでる貴族には、庶民的過ぎるのは許して欲しい。
「ヨヒアム、騎士団の人達にここを中心にベースキャンプを張るように伝えてちょうだい」
流石に全員をログハウスに泊める事は出来ないので、私とおじい様、キャサリン、おじい様の侍従者以外はテント生活になっちゃうんだよね。
その代わりお風呂は私が作ってあげるから許して欲しい。
「了解しました」
ヨヒアムは頷くと、騎士達に私の指示を伝えに行った。
「キャサリン、お願いしていた目隠し用の厚手での布を、あの木とその向こうの木の間に図面通りに設置しておいて。おじい様を中へ案内したらすぐに行くわ」
「かしこまりました」
キャサリンとヨヒアムに、お風呂を作る説明をしてあるので、段取りよく作れそうだ。
「おじい様、中に入りましょう」
「何か、面白そうな事をするのかな?」
手を引いて歩き出した私に、おじい様は不思議そうに尋ねた。
「着いてきてくれた騎士達様にお風呂を作ろうと思ってるんです」
「それは面白そうだ」
「おじい様には、お部屋に作って差し上げますので、そちらで我慢してください。あまりベースキャンプをうろちょろされませんように」
ついてくる気が満々なおじい様に、別の提案をする。
お風呂を置けるようにお風呂になる部屋は作って貰ってあるのよね。
ほら、排水面とかあるから、普通の部屋には置けないし。
「うむ……今回はそちらで我慢しよう」
「はい」
元王様にウロウロされてしまう騎士達の気持ちを考えてくれて、ほんと良かった。
ログハウスの中に入ると中もしっかりと図面通りに作られていた。
一先ずおじい様を1階の1番大きなお部屋に案内した。
「おじい様はこちらに。その隣をおじい様の侍従者。私は私の侍従者と2階の部屋を使いますやね」
ソファーとベットの置かれただけの部屋だが、屋敷では無いため、そこは許して欲しい。
「あい、わかった」
頷いたおじい様にほっとする。
「お風呂はこちらの部屋に作ります」
おじい様の使う部屋の対面のドアを開けた。
ワクワクした顔で後ろから覗き込むおじい様。
そんな大したことないんだからね。
両手を前に突き出し、お風呂を作る為のイメージを浮かべた。
「ディック」
少し浅めの浴室で、タイルのような滑らかな表面の長四角のそれがゆっくりと形作られた。