漂い始めた不穏な気配5
水車の村までは、何事もなく平和にあっさりと到着した。
物々しい集団に出迎えてくれたぺトラスとモルトが、顔を強ばらせていた。
もちろん、何事かと集まってきた住人達も、である。
「ようこそおいでくださいました」
馬車のドアからおじい様手を引かれ出てきた私を見て、ほっとした顔になったぺトラス達に出迎えられる。
「出迎えご苦労さま。水車を視察したら、直ぐにコテージに向かうつもりなの。好きに見て回るから、貴方達は下がっていいわ」
「かしこまりました」
恭しく頭を下げたぺトラス。
この場でおじい様の正体を明かす訳にはいかないし、詳しい話も出来なくて申し訳ないわね。
「さあ、水車を見に参りましょう。ヨヒアムももう1人誰か着いてきてちょうだい」
後ろを振り返りヨヒアムに目配せする。
「かしこまりました」
ヨヒアムは直ぐ様近くにいた騎士と会話し、代表を1人連れこちらへとやってきた。
それを確認し、ぺトラス達に背を見守られながら、おじい様の手を引いて水車へと向かった。
「これは……また……聞いていたよりも実物は凄いな。アリーシャは天才だな」
流れの早い川の水量でクルクル回る水車を、子供のような顔をして見上げるおじい様。
「いいえ、おじい様。先程の者達が頑張って作ってくれたおかげなのです」
曖昧な指図絵と、拙い説明を聞いて、理解し完成させてくれた彼らこそ天才。
「本当にいい子だ」
おじい様の繋いでいない方の手が私の頭を優しく撫でてくれる。
「おじい様、是非ともこちらの中も見てください」
水車が作り出した動力を是非とも見てほしい。
「あぁ、是非とも見せておくれ」
「はい」
再びおじい様の手を引いて、建物の扉の前に向かうと、ヨヒアム達が素早く両開きに扉を開けてくれた。
「……いやはや、生きているうちにこの様な物が見られるとはな」
水車から伝わる動力が、秋に収穫した麦を大量に小麦へと量産していた。
受け皿に雪のように降り積もる白い粉。
人力では出来なかったキメ細やかな仕上がり。
本当ならば中で粉を袋に詰める作業をするもの達が居るのだが、訪問時間を伝えていたおかげでぺトラス達が退去させてくれたようだ。
本当にいつも、至れり尽くせりだよね。
「落ち着いたら、私の領地にも作って貰えぬかの?」
「ええ、もちろんです。本当は図面と技術提供のみですが、おじい様の所は特別です」
得意顔で頷いた。
「粉を少し手に取ってみてもよいかの?」
「衛生面の観点から、臼とトレーの中の粉は困りますが。こちらの、少し溢れ出たものならばどうぞ」
粉挽き機の横に溢れ出ていた粉を掴んでみせた。
雑菌の繁殖を防ぐ為に、ここで働く人達には、手洗いとマスクを徹底してもらってる。
「おお、これはキメかま細かい。良出来だな」
「はい。もうすぐ辺境伯印のブランド粉として販売していきます」
商人達とも打ち合わせ済みだ。
領地で消費出来ない分を王都や周辺に展開させて行く。
水車はうちの領地にしかないから、暫くはうちの領地の独占販売になるはず……勝ち誇った笑みが浮かんだ。
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