漂い始めた不穏な気配1
お誕生日会は盛大なフィナーレを迎え終わりを告げたらしい。
6歳児の私は眠気に耐えられず、お父様とおじい様達の話し合いの途中に夢の国に旅立ち、気がついたら翌朝だった。
小さな子供の誕生日パーティーは、主役抜きでパーティーが終わる事が当たり前のようで、来客が気を悪くした様子も無かったことに安堵した。
ここにチョコレートファウンテンに、近付くことさえ出来なかったことを告げておこう。
一口でもあれを食べたかった悔しさを私は忘れない。
訪問客は全て帰宅した……おじい様とおばあ様を除いては、って事だけど。
結論から言うと、お父様が伝えた荒唐無稽な話をおじい様達は疑うこと無く信じた。
なんなら、大いに喜んだらしい。
その結果、残留が決定した。
表向きにはおばあ様の体調が芳しくない為に、静養を目的として我が家に逗留する事になった。
そして、物珍しい珍獣扱いを受ける羽目になった私は今、おじい様に構い倒されている。
「アリーシャ、じぃじと魔法で遊ばないか?」
「おじい様、今は読書の時間です」
ワクワクした顔で私を見つめるおじい様。
ここは図書室です、どうぞお静かに!
「そんな事言わずに、じぃじと遊んでおくれ」
捨てられた子犬のような瞳をしても、無理なのもは無理です。
最初のうちはおじい様に気を使って、付与魔法をして見せたり、聖魔法を使って見せたりしたものの、際限なく構い倒してくるので、おばあ様から甘やかしてはいけないとお達しが出た。
「おじい様、おばあ様にまた叱られますよ」
「うっ……し、しかしのぉ」
強面のおじい様だが、おばあ様にはめっぽう弱い。
「この時間の後、基礎訓練を行いますので、その時まで我慢なさいませ」
「アリーシャはつれないのぉ」
おじい様を無視して、手元の本へと視線を戻した。
付与魔法と、魔力量の増加方法の載ったこの本は、お父様達も見た事がない本だった。
いつからここにあったのか、どの時代の物かさえ分からない。
見た目はかなり古い本なので、それなりに年代を超えてきたことは分かる。
ただ、盗難防止装置の掛かっているこの図書室から、持ち出す事は禁止された。
万が一、流出してしまうと大変な事になるからだそうだ。
私としては図書室で読めばいいので、お父様の言う通りに本を図書室に直ぐに戻した。
魔力量の増幅方法については、家族全員に伝えた。
伝えたと言っても、その日の寝る前までに魔力を使い切るだけの話なのだが。
それが難しいと言うので、宝石に魔力を注入すればどうかと提案した。
魔力の注入は慣れるまで無駄に魔力を消費して、直ぐに使い果たしてしまうし、慣れれば慣れたで寄付魔法を取得出来る。
これぞ、一石二鳥である。
お父様達に渡した付与魔法のアクセサリーも、宝石に魔力を入れて作ったものだし。
魔力切れの倦怠感が翌日まで続くのは我慢してもらいたい。
それさえも、慣れれば倦怠感を克服できる。
仕事に支障がでるようであれば、ヒールもかけてあげよう。




