魔力量増えてます9
お父様達がどうして私に伝えなかったのか、疑問に思う所ではあるけれど、私を王位に着けるつもりが無かったからだと思う。
「王位を望まず、貴女は何をしたいのですか?」
「はい、おばあ様。私は辺境伯領の発展に尽力しながら、のんびり暮らしたいと思っています。王位など、私には身に余るのです」
そんなの決まってるじゃん。
面倒くさい王族になんて、なりたいと思うわけが無い。
「蛙の子は蛙だな。お主の父親とそっくりではないか」
豪快に笑いだしたおじい様に、お父様は肩を竦めた。
「ほら、貴方達もいつまでも立っていないで、そこにお座りなさいな」
居心地悪そうに立ったままだったお父様達は、おばあ様の言葉で私達と対面あるソファーに腰を下ろした。
「シルバード、なぜ王家の瞳についてこの子に話さぬかった?」
あ、それ、私も気になります。
「父上、アリーシャの瞳が完全に黒くなったのはここ半年の話なのです」
お父様の言葉に、そう言えばここまで黒くなかったような気がしてきた。
「ほぉ。魔力量が急に増え始めたのか。いや、そんな事が有り得るのか」
思案顔のおじい様はうむと顎を撫でた。
「この半年、色々な事が起こりすぎて、すっかり黒い瞳の事を失念していました」
「ほんと、色々ありましたものねぇ」
「父上に指摘される今まで忘れてたな、ハハハ」
本当にお父様とお母様は忘れていただけのようだ。
まぁ、うん、色々は私がしでかしてきたことだよねー。
「認識阻害の眼鏡などと考えるこの娘が、色々の原因のようだな」
おじい様の瞳が私を見下ろす。
正解でーす! なんて軽々は言わないけれど、どうしてバレた。
「はい。本日父上達に相談しようと思っていたのです。我々だけではこの子を守りきるのに力が足りません」
「うむ」
お父様は初めから、おじい様達に相談するつもりだったんだ。
「アリーシャ」
「はい、お父様」
「引退したとは言え父上には知恵も大きな勢力もある。そして信頼するに足りうる充分な人物でもある」
「はい」
「君の事を相談しても良いだろうか? 急ですまない。本当はパーティーが始まる前に君に伝えるはずだったんだが……」
言葉を濁したお父様に、それは私のせいですね、と申し訳なくなった。
アーティファクトなんて、プレゼントされたら、計画飛んじゃうよね。
「お父様、ごめんなさい。おじい様達が味方になってくださるのなら、心強いですね」
「いいんだよ。そうだね、アリーシャ」
お父様は覚悟を決めたようにおじい様を見据えると、
「少し長い話になりますが、どうか驚かずに聞いてください」
と半年前に私がお父様達に話して聞かせたことと、これまでに何があったのかを語り始めた。
おじい様とおばあ様の顔が唖然とするのは、そう、遠くない未来だった。