魔力量増えてます5
「知らなかったんだね」
ムンクの叫びの様に両頬を抑え驚く私を見て、お兄様が苦笑いになる。
「ただの付与魔法だと思っていました」
しゅんと俯いた。
「アリーシャ、付与魔法自体が、今のこの世界では珍しいんだよ。高位のほんのひと握りの者でなければ使えないんだ」
「……嘘やん」
誰にも聞こえない声でボソッと呟いた。
やっちまったな!
あの餅をついてるおじさんに言われちゃいそう
だ。
普通に使える魔法だと思ってました。
騎士の時の記憶にも付与魔法はあったもの。
……ま、まさか。
「お父様、もしかして1000年前では普通に使えていた魔法ですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「そうだね。1000年前ならば、国全体の魔力量も多かったはずだから、付与魔法も一般的だったかもしれないね。500年ほど前からこの世界の魔力が下がり始めたと、私達は習っているよ」
「……ですよね」
女子高生の記憶ばっかり使ってると思ったら、さりげなく騎士の記憶も使ってた件。
「アリーシャの2つ目の記憶がこの子に影響を与えてしまったのかしら」
騎士だったけど、その時代の魔法の知識はあったみたいです、お母様。
「アリーシャ、これから何かをする時はお父様達に相談してくれるかい?」
「はい、そうします」
「私達は出来るだけ君に、自由に生きてもらいたいと思っている。でも、その為には隠さなくてはいけない事も多い。私達が協力できるように、君を庇えるように、状況の把握はしておきたい」
お父様は床に膝をついて、私と目線を合わせると私の両手を大きなその手で優しく包み込んだ。
「そうよ、アリーシャ。やりたい事を我慢しなくてもいいの。私達に事前に知らせてさえくれれば」
お母様は私の隣に座ると頭を優しく撫でてくれた。
「僕もね、一緒に秘密を守るからね」
お母様とは反対側に座ると、私にぴとっと体を寄せたお兄様。
「……ありがとうございます」
私の家族は、皆温かい。
溢れるほどの優しさを与えてくれるこの家族が大好きだ。
「アリーシャが私達を思ってくれるように、私達もアリーシャを思っているよ」
「……うん」
「他にもう何もないかい? 今なら笑って聞ける気がする」
冗談めかしてそう言ったお父様に、
「あ」
と声を出せば、再びお父様の顔は少しだけ強ばった。
「付与魔法の事が載ってた本に、魔力量の底上げをする記述もあったんです。魔力量の底上げは普通ですよね?」
「「「えぇ」」」
素直に告白した私に、3人のなんとも言えない悲鳴が部屋中に響き渡った。