全力全開、5歳児に我慢は無理なのです6
来賓が皆、帰っていき、ほっと一息が付けたのは、夕方になろうとしている頃だった。
皆を見送ったあと、私はぺトラスの家でぺトラスとモルトの2人に向き合っている。
お父様達にも先に帰ってもらっていた。
「でね、この村の周りに壁を作ろうかと思うの」
「お嬢様、端おりすぎです」
背後に控えていたキャサリンに突っ込まれた。
「畑や民家が、夜盗や野獣に襲われない様にと思ったんだけど」
「壁ですか?」
不思議な顔をしたぺトラス。
「領都みたいに、壁で囲って、人の出入りは門からにすれば安全面が飛躍的に上がると思ったの。ここは、騎士団も在中していないし、発展すると危険が増えるわよね」
「なるほど、確かに安全面は保証されますな」
うんうんと頷いたモルトに、
「モルト、ただ壁と言っても、あんなに大きな物を作るのは一苦労ですよ」
とぺトラスは言う。
「あ! 2人には門扉を2箇所作ってもらうだけでいいのよ。壁は私の土魔法で作るから」
チート全開で頑張りますよ!
「「えっ?」」
豆鉄砲でも食らったように目を丸くした。
「私、魔力量が多いし、土魔法が使えるのよ」
「は、はぁ」
困惑してるモルト。
「だから、住民と相談して欲しいの。
もちろん、お父様に言って騎士団の巡回も回しては貰うけれど、それだけじゃ防げない事も出てくるかもしれないから」
「分かりました。住民を集め早急に相談いたします。ただ、お嬢様の魔法を使う事は領主様はご了解の上ですか?」
「ええ。お父様には許可を貰ってるわよ」
心配そうなぺトラスに、安心していいと微笑んだ。
「しかし、お嬢様は色々と規格外ですじゃ」
モルトの言いたいことは分からなくもない。
「モルト、お嬢様に失礼ですよ」
キャサリンは苦言を呈する。
「いいのよ、キャサリン。規格外なのは間違いないもの。でも、、ここまでこの辺りが発展するとは思ってなかったのよね。発展が無ければ壁までは思いつかなかったわ」
水車と、畑とパラパラと家が立ち並ぶぐらいだと思ってた。
それが前来た時よりも、更に民家が増えてるじゃない。
「確かに思っていたよりも住民が増えましたね」
ぺトラスは苦笑いを浮かべる。
「わしらもびっくりしてますじゃ」
ワハハとモルトも笑った。
「別に慌てないから、皆とよく話し合っておいて。あ、それと壁を作るのが私だってことは秘密よ。さ、キャサリン帰りましょ」
2人が頷いたのを確認し私は立ちがると、キャサリンを伴ってぺトラスの家を出る。
外にはうちの馬車と、その傍にヨヒアムが立っていた。
「ヨヒアム、待たせたわね。帰りましょう」
「お話は終わりましたか?」
「ええ」
頷くとヨヒアムが馬車のドアを開け、手を差し伸べてくれる。
私が乗った後にキャサリンが乗り込んでくる。
馬車に乗り窓を開けると、後ろから着いてきていたぺトラスとモルトが居た。
「お嬢様、本日はご苦労さまでしたじゃ」
「お気をつけてお帰りください」
頭を下げる2人に軽く手を振った。
馬に乗ったヨヒアムが先導する様に馬を走らせると、馬車はその後に続いて動き出した。