全力全開、5歳児に我慢は無理なのです5
水車の動力が伝わり粉引きの臼は、綺麗な白い粉を量産していく。
「「「おぉ」」」
大きな拍手と共に感嘆の声を漏らす人々。
「水車の動力はこの様に利用され、臼を油引きに変えれば菜種などの油も力を使わずに作り出せます。将来的にはフィラメントを利用した電気を作り出す事も可能になるはずです。ただ、電気への変換は私には分からないので専門家におまかせ出来ればと思っています。皆様と新しい一歩を踏み出せた事を感謝して私の言葉を終わりたいと思います。皆様、この後はご自由にご見学くださいませ」
丁寧にお辞儀して、傍に控えてくれていたヨヒアムの手を借り足場から降りると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
掴みはOKだね。
「アリーシャ、とても素晴らしかったわ」
両親の元へ向かうと、お母様が優しく抱きしめてくれた。
お父様は、何故か号泣してる。
「アリーシャ、水車は素晴らしいね。沢山の可能性を秘めている」
顔を覗き込んだお兄様が褒めてくれた。
「アリーシャお嬢様、領都の代表をしております。アザリス・ヘインと申します。水車にとても感銘を受けました。ただ、領都には水車を設置できる場所が無さそうです」
挨拶に来てくれたアザリスに向き合う為に、お母様の腕から抜け出した。
「アザリス様、ご挨拶ありがとうございます。領都には水量の大きな川は有りませんが、分かりに高い山から吹き抜けてくる風があります。その風を利用した風車にしてもよろしいかと思います」
「なんと! 風車ですか。それならば領都にも建設可能ですな」
嬉しそうに顎髭をさすったアザリスは、満面の笑みを浮かべた。
「技術や資料の提供は惜しみません。皆様、水車や風車に興味のある方は、技術者になり得る者準備して辺境伯までご連絡を」
周囲で声を掛けたそうにしていた面々を見渡してそう告げた。
「技術者の派遣はなさらないので?」
と誰かが問いかけた。
「もちろん、最初は派遣する事は可能でしょう。でも、故障した時などは、その土地にいるその土地の技術者が必要となるはずです」
ぺトラスやモルトの負担を大きくするだけの様な事はしたくない。
「なるほど、よく考えておら居られる」
アザリスは感心したように頷いた。
「水車や風車を領内に増やす為には、その技術者を育てる事が急務だと思っています」
5歳児の私が何言ってんだ? って顔の人は中に居るけれど、これは間違いないと思うんだ。
「領都は戻り次第、技術者を募ってみようと思います。どの様な分野の者がよろしいですかな?」
アザリスは、幼いからと私をバカにした訳でも無く、しっかりと意見を聞いてくる。
とても好感の持てる人だった。
「そうですね。ぺトラスは家具屋、モルトは鍛冶屋、あとは大工達が手伝ってくれています。水車の動力には金具も細かい細工も必要なのです」
「なるほど、鍛冶屋に家具屋、大工。やる気のある者を集めてみせます」
「ええ、頑張ってください」
差し出されたアザリスの手を、しっかりと握り返して握手した。