全力全開、5歳児に我慢は無理なのです4
とうとう水車の竣工式を日がやってきた。
天気も快晴、水量も問題なし。
水車小屋の周りに出来た村はちょっとお祭り騒ぎになっていた。
「お嬢様どうぞ」
馬車が開き、ヨヒアムが手を差し伸べてくる。
私はそこ手を取り、ゆっくりと馬車の階段を降りる。
「姫様~」
「お嬢様~」
本日も元気な声援付きだ。
遠巻きに群がっていた住人達に手を振り返す。
子供達はお祭り騒ぎでにこやかだけれど、大人達は皆緊張した表情を浮かべていた。
水車の成功は、皆の生活に直結するものね。
私の後ろから、お父様にエスコートされたお母様が降りてくる。
その後に降りたお兄様は、私の横へと並んだ。
領主一家の勢揃いです。
この日の為にキャサリンに、お洒落なドレスを着せられ、可愛く編み上げられた金髪は風にそよそよ揺れる。
お母様もゴージャスマダムである。
お兄様とお父様も、ぴしりとスーツを着て当社比200%かっこいい。
各町の市長や、建設業者なども参加している。
水車に興味がある者がいればと、お父様が通達してくれたおかげだ。
「よくおいでくださいました」
出迎えてくれたぺトラスは、どう見ても貸衣装だと言わんばかりに、サイズが合ってない。
「ようこそおいでくださいましたじゃ」
ロボットみたいな動きでモルトがお辞儀する。
2人共、緊張しすぎだって。
まぁ、思いの外、人が集まってるのもあって緊張はピークなんだと思う。
「お、お嬢様、ご挨拶をお願いいたします」
「わかったわ」
急ごしらえの足場にぺトラスが案内してくれる。
ぺトラスの手を借り、足場に登ると少し高くなった視界で、周囲を見渡した。
「皆様、本日の竣工式においで下さりありがとうございます」
スカートを両手で少し持ち上げ膝を曲げる。
「本日、竣工式を行う水車は私の立案を、ぺトラスとモルトを中心としたメンバーが実現してくれたからこそ、この日を迎える事が出来ました。水車の水力と言う動力を手に入れる事で、色々な可能性が見つかると思います。まずは、本日は人力では無い粉挽きをご覧に入れたいと思います」
「うぅ……アリーシャが立派だ」
お父様、涙ぐんでる場合じゃない。
お母様に肘鉄を食らってる姿に苦笑いが漏れた。
「それでは、皆さん、あちらをご覧下さい」
水車と建物の方に手を向けると、モルトとぺトラスが、大きな扉を両開きに開けた。
その中に見えるのは水車から導線を繋いだ大きな粉挽き臼、そこには去年の麦がセットされている。
固唾を飲んで見守る群衆。
「水車の杭を抜いて」
私の号令とともに水車の前にいた3人が杭を大きな木槌で叩き始めた。
あっという間に抜ける杭。
水車は川の水流を受け、大きな音を立てて回り出した。