2回目なんですが3
名前は思い出せないけれど、16歳の私はプロスケボー選手を目指していた。
頂点に立つために毎日一杯練習して、夢に向かって走り続けてた。
私が死んだあの日は、夢に近づくための大切な大世界会に向かう途中だった。
あともう少しで目的地というところで、エンジントラブルが起こり、やむ無く海面に胴体着陸を試みた飛行機。
激しく揺れる機内、恐怖に震えた人々の悲鳴。
震える体を守るように抱きしめ不時着の衝撃に備えていた。
水にぶつかる激しい音と響き渡る悲鳴。
鈍い音ととんでもない痛みが私の頭を襲った。
どこかにぶつけたんだろうと思った瞬間には、視界はブラックアウトしていた。
そして、次に目覚めた時には見たことも無い部屋の豪華な天蓋に囲まれたベッドだった。
と、いうのが初めて前世を思い出した時の話。
そして今ここ!
何故だか分からないけど、日本人だった頃より前の前世をどうやら思い出したようだ。
ということで、私、アリーシャ・ブランシェットは2回の過去を持つ5歳児である。
それにしても……ふむ、私、頭打ちすぎじゃないだろうか。
頭の回路大丈夫かな、なんて思いつつ、ゆっくりと上半身を起こした。
脳震盪を起こしたせいか、少し体がふらついた。
ぶつけたであろう右側頭部もたんこぶができてる。
「……痛たっ」
そっと触れたのに、滅茶苦茶痛かった。
ま、今回は死なずに済んだことに感謝したい。
大木にぶつかった馬から落ちて、たんこぶだけで済んでるのは、奇跡だろうね。
剣士の次が女子高生で、その次が辺境伯令嬢だなんて、自分でも数奇な運命だと思える。
過去2回分の記憶を持ったまま今の人生を歩んでいくなんて、情報過多じゃない?
そんなことってありえるの? と思うけど、まぁ実際あるんだから仕方がないけど。
女子高生時代に読んだ異世界転生が、自分に降り掛かってるのがどーにも奇妙な気持ちになる。
「神様さぁ、情報過多過ぎない? 平凡な辺境伯令嬢には重荷じゃないかな……」
居るかも分からない神様に愚痴を零してみた。
すると、急に目の前に眩しい光が溢れ出した。
えぇ……え、なんなの?
眩しさに目を閉じた私の耳に届いたのは、聞いたこともない澄んだ声だった。
「あ~やっと呼んでくれたぁ」
安心したようなその声に目を開けると、先程までの眩しさは収まっていたが、目の前にふわふわと浮かんだ金色の光の玉がチカチカ光っていた。
「……はっ?」
なんだこれ、怪訝そうに眉が寄ってしまったのは仕方ないと思う。