家族の絆とリミッター解除6
「あの……この間落馬した時にまた記憶が蘇ったの。この国の1000年前の女騎士だった記憶が」
「2度の転生記憶か……」
さすがにこれには驚いたらしいお父様。
「アリーシャは奇跡の子だね」
ほんわかと微笑むお兄様に、緊張が溶ける。
「剣士の記憶、あの騎士団で取り入れたメニューはそれか!」
「あ、ラジオ体操は女子高生の記憶なんだけど、練習メニューは騎士の方だと思う」
「ラジオ体操はとても素晴らしいモノだと騎士団長達が手放しで褒めていたぞ」
あ、うん、そんなに気に入ってくれてたのか。
「2回の転生の記憶があるって事は、亡くなった時の記憶も持つと言う事ね。1人で抱えて大変だったわね」
お母様が涙ながらに抱き締めてくれる。
そこは、まぁ、そんなに重要視してなかったんだけど。
毎回、頭を打つっていう悲劇なんだよね。
「アリーシャ、今までよく1人で耐えてきたね」
お兄様は私の隣に移ってくると膝の上の手をキュッと握りしめた。
「アリーシャ、本当に頑張ったね。これからは私達と一緒に乗り越えていこう」
目を潤ませた大きなお父様に申し訳ない気持ちになりながら、私は口を開いた。
「えっとね、2回の転生はそう問題ないかしら。
その後の方がずーっと問題で……」
えへへと笑って光の玉に会った話を掻い摘んで話して聞かせた。
私が2度の転生記憶を持っていた理由と、神様とかいうあいつが、余計な力を一方的に授けて消えていった所まで。
「……」
「……」
「……」
唖然とした顔で3人が停止した。
うん、まぁ、そうなるよねー。
神様だもん。
眷属とか言われちゃってもさー受け入れにくいと思う。
しかも膨大な魔力量と6属性の魔法、その中に聖魔法もあるってゆーんだからね。
自分の事なのに客観的にそんな事を思った。
「あ、アリーシャは神の眷属になったのか」
いち早く再起動したのはお父様。
「あ、うん。使命とかある訳じゃないんだけどね」
あの神様は、ノリでしたに決まってる。
すっとぼけた神様だったもんねー。
「聖魔法は珍しくて、発現した者は聖教会で聖女として扱われるんじゃ?」
顔を青ざめさせたお母様。
「アリーシャと別れるなんて嫌だよ」
お兄様は今にも泣き出しそうだ。
私ももちろん聖教会なんかい、行く気はさらさらない。
「7歳の洗礼式でどう誤魔化すかが本日の議題です」
そう! そこさえ乗り越えれば、問題回避。
「アリーシャ、清々しい顔でそう言うけどな。そこが一番の問題だよ」
お父様は力尽きたように笑う。
「隠蔽出来ないか、魔法の限界に挑戦してみるつもりですが、万が一の保険も欲しいところですね」
「アリーシャは、本当に5歳児とは思えないぐらい冷静だな」
「貴方、アリーシャはいつもこんな感じですわよ」
お父様とお母様は、呆れ顔で頷き合う。
秘密にしてた事を話したら、スッキリしたので思考も上手く回り始めたんだよね。