家族の絆とリミッター解除1
「お嬢様、朝ですよ」
窓のカーテンを開けながらキャサリンが声をかけてくる。
眩しさに目を顰める。
片目だけ開け「もう少し寝たい」と言えば、
「遅くまで起きていらしたせいですよ」
と苦言を呈される。
何故……バレてるのかな。
昨日は3時前に部屋に戻って、急いでパジャマに着替え寝たのから、誰にも見つかってないはずなのに。
「お嬢様詰めが甘いです」
そう言いながらキャサリンが見せたのは昨日履いていた靴。
泥と草の汁に汚れていたそれだ。
「あ、ちゃあ」
「お嬢様、どちらへ行ったのかとか、どうやって行ったのとかは聞きませんが。お一人での行動はお控えください」
「は、はい」
キャサリンの迫力に目が覚めた。
眠くて、着ていった服を畳む事も、汚れた靴を綺麗にする事もしないで、寝ちゃったと思い出す。
そりゃ、バレるか。
目を擦りながら体を起こすとキャサリン、真剣な顔でこちらを見ていた。
「ごめんなさい、キャサリン」
「お嬢様には、自由に過ごしていただきたいのですが、内緒にされると何かあった時に対応出来ません」
「あ、うん。そうだよね」
「怪我もなく無事に戻られたので、今回はこれぐらいにしておきますが。くれぐれも、くれぐれも今後はお一人で行動なさいませんように」
悲しげに瞳を揺らすキャサリンに、申し訳ない気持ちで一杯になった。
自分勝手な行動は、私以外を困らせる事にどうして気づかなかったんだろう。
「昨日の事は、お父様達と話をしてから、何をしていたのか教えるね」
まだ誰にも言えない秘密だから。
6属性の魔法の事とか、まだ知られる訳にはいかないんだ。
「かしこまりました。その時をお待ちしております。さぁ、着替えて朝食に向かいましょう。お昼までには旦那様達もお戻りになるはずですよ」
話を切り替えたキャサリンに、頷いてベッドから降りた。
キャサリンが持ってきてくれた桶の水で顔を荒い、パジャマを脱ぐ。
準備されていた本日のドレスに着替えると、ドレッサーの前の椅子に腰を下ろす。
今日は淡いブルーのマキシドレスだ。
胸元に大きなレースのリボンがあしらわれた可愛いデザインになってる。
「髪は、ハーフアップにしておきましょうか」
「うん」
鏡越しにキャサリンに頷いた。
ブラシを通される度にサラサラ揺れる自分の髪が凄く綺麗だと思った。
キャサリンがいつも髪のお手入れをしてくれるから、私の長い金髪の髪は縺れや枝毛なんかもない。
女子高生だった頃は、ショートボブの髪さえも、手入れが行き届いてなかったんだよね。
騎士の頃にしても、髪質はゴワゴワしてたと思う。
お世話してくれる人のありがたみを心の底から感謝した。