進化する領地6
「ようこそおいでくださいました」
ぺトラスが代表してそう言うと、モルトを初めとした水車に関わったであろう5人程が丁寧に頭を下げる。
「とても大きく立派な物を作ってくれてありがとう」
この大きさならば、粉を引くのも問題なさそうね。
「ご案内いたします。こちらへどうぞ」
ぺトラスが水車の側へと案内してくれた。
大きなそれは、ストッパーの杭を打っているためまだ動いてはいないけれど、川の水量から見て動き出せばしっかりと動力を生み出しそうだ。
建物の室内も、水車からの動力が上手く伝わる仕組みになっていて、本格的な仕上がりだ。
「2人共、いえ、皆凄いわね」
あの拙い説明でここまで作り上げてくれるだなんて、本当に感心する。
「勿体ないお言葉です。早速、水車の試運転を行いたいとおもいますがよろしいでしょうか?」
「ええ、お願い」
私が頷くと、ぺトラスは数人に目配せをする。
3人が頷くと建物の外へと出ていった。
カーンカーンと木を打つ音が聞こえ、3人の掛け声と共にストッパーが外される。
ザザーンと水音がして、水車がゆっくりと回り始めた。
それと同時にガタガタガタと、木の棒が周り動力が伝わると、粉引きの臼もゆっくりと回り始める。
「成功ね」
思わず拍手した。
秋の収穫が本当に楽しみだ。
「へい。竣工式には、去年の麦の穂を使い実演しようとおもっております」
モルトは顎髭を擦りながら、満足そうに言う。
「実際に見た方がいいわよね」
うんうんと頷く。
お父様達に見せる日が楽しみね。
みんな驚くに違いないもの。
考えただけでワクワクしちゃう。
この村はきっと発展する。
今はまだ領主が買い上げる形になっているけれど、秋になり小麦が出来れば、商人との取引と考えてる。
収入を得て、領主に納税って形にするのが、今の目標。
「ところで気になったのだけど、村の上下水道はどうなっているの?」
ここ大事!
「水道は井戸を掘ってそちらを使っております。下水の方は各家の浄化室に分解してくれるスライムを入れておりますので、衛生面は問題ないかと」
「スライム……」
ぺトラスの説明に目を見開いた。
流石異世界……スライムが役に立つのか。
「生ゴミなんかも、一手に集めてスライムで消化するのがいいわね。あと燃やせる粗大ゴミなんかも村で、集めて処分すると、町並みを綺麗に保てるわ」
虫の発生を押さえて、ネズミやゴキブリの温床を断てば、衛生面にいい。
「分かりました。それを周知させます。後何かございますか?」
「そうね……井戸水や湧き水を飲水として利用する場合は1度煮沸させた方がいいわね」
見えない微生物も煮沸で死滅するし。
「分かりました。そちらも周知しておきます」
しっかりと頷いてくれたぺトラスに、任せておけば良さそうだ。




