進化する領地5
水車を見に行く日、ドレスじゃなく動きやすいワンピースで私は馬車に乗り込んだ。
前の席にはキャサリン、ヨヒアムと数人の騎士達は馬で馬車を囲む様に進んでる。
天気も良いし、春うららかな風も吹いていて、絶好の視察日和だね。
スケボーは足元に置いてる。
土の上じゃ中々乗れないんだけどね。
玄関アプローチの石畳もガタガタするから、本当の所はコンクリートで作られた専用エリアが欲しいところだ。
水車の場所は家から馬車で40分位のところにある。
馬で早駆けをすれば20分ぐらいなのだが、貴族令嬢が早駆けなんてダメです! とキャサリンに却下されたのだ。
領都を出て暫くは、草原と森が続いた。
似たような景色に飽きてきて来た頃、ぽつりぽつりと見え始めたのは、畑と農夫達の作業をする姿。
うちの農夫には、領都の貧困街の人を採用してる。
もちろん、本人の意思を確認して連れてきているので、拉致とか強制とかそういうものでは無い。
雇用が生まれ貧困街が縮小されればと言う思いで始めた事業。
もちろん、指導係として本当の農夫の皆さんにも来てもらってる。
街道を挟むように並ぶ畑はどこもきちんと管理がされ、手がいい届いてる。
秋になりこの一体が黄金色の麦の穂が敷き詰められる日が楽しみでしょうがない。
畑が途切れ次に見えてきたのは民家。
「本当に村が出来てる」
思っていたよりも沢山立ち並んでいる事に驚いた。
「食堂や雑貨屋も出来ていますね」
キャサリンも感心したように町並みを見つめる。
「こんなに多く建ち並んでいたら上下水道がどうなっているのか心配だわ」
特に下水道は、きちんと整備しておかないと菌の温床になり、病気が流行ってしまう。
早急に解決しないといけない課題だと、頭の中のメモに書き込んだ。
「お嬢様~」
「姫様~」
馬車が村の中に入ると、私の乗る馬車に向かって手を振ってくれる人達が増えた。
辺境伯の印の付いたこの場所を皆覚えていてくれたのね。
「みんな~」
馬車の窓越しに笑顔で手を振ると、わーっと歓声が上がる。
大歓迎じゃない。
子供達が馬車に駆け寄ろうとするのを、周囲にいる騎士達が止めにかかる。
「危ないから馬車に近寄らないでね」
窓を開けそう伝えると、「は〜い」といいお返事が返って来る。
大人しく道の端に避けた子供達にもう一度手を振って、その場を通り過ぎた。
それから少し走って川岸まで来ると、大きな水車のついた広い建物が見えてきた。
思っていたよりも大きなそれに、にんまりと笑みが浮ぶ。
「お嬢様~」
建物の前でぺトラスとモルトが、大きく手を振っている。
2人共すっかり日に焼けて、屈強な感じになってるわね。
くすくす笑いながら、私は馬車の到着を待った。




