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進化する領地4


艶やかに磨きあげられたそれは、両端がゆるりとカーブしていて、とても綺麗だった。


持ち上げて後ろを見るとトラックが2箇所ついていて、ベアリングとウィールが、それぞれ2個ずつ着いていた。



「……スケボー」


懐かしい響きを口にする。


水車の説明をした時に、たまたまこんなの出来ないかなーとこれまた拙いイラストで説明しただけだったのに。


まさか、本当に作り上げてくれるだなんて思いもしなかった。



「お嬢様の注文通りに出来ていますか?」


心配そうにこちらを見るぺトラスに、何度も頷いた。



「……ありがと、2人とも」


スケボーを両手で抱きしめ、震えた声でお礼を言った。


嬉しくて、またスケボーを手にする事が出来るだなんて思ってなくて。



「コマを回すベアリング? って言うやつが中々の曲者でしたじゃ」


かなり苦労したらしいモルトの言葉には重みがあった。



「キャサリン、踵のない平べったい靴ってあったかしら?」


早速乗ってみたいじゃん?


ワクワクが止まらないよ。



「運動用の靴を持って参りましょうか?」


「うん。お願い」


玄関アプローチの石畳の上ならスケボー出来そうだよね。





キャサリンが靴を持ってきてくれた後、それには着替えて皆で玄関の石畳までやってきた。


私の手にはもちろんスケボーが抱き抱えられている。



作ったぺトラスとモルトには乗り物だと伝えてあったけど、他の皆は今から何が始まるのかと、興味津々で集まってきていた。


そんなに観客は要らないんだけどな、と思いつつもスケボーに乗れる事の方が勝っていて、周囲なんて気にならない。


うちの玄関アプローチ広くて最高! と叫ばなかっただけ良しとしよう。



「い、いくよ」


前世の様に乗れるのかな。


周囲が息を飲んで見守る中、スケボーを足元においで、先ずは両足で乗れるかどうか確認する。



うん、安定感のあるボードに仕上がってる。


先ずはプッシュ、片足で地面を蹴って前に進んでみる。


それから、前の方を左右に揺らすチックタック。



覚えてる……体は覚えてるね。



そのままスピードを上げて、フロントを上げ、そのままくるりとターンする。



「「「「おぉ」」」」


周囲の驚きが聞こえてくる。



更にスピードを上げ今度はフロントを持ってオーリーだ。


ふわりと飛び上がるボードと私。


懐かしい風が頬を撫でたような気がした。



カタンと、音を立てて着地すると、周囲から拍手が沸き起こった。


凄い初歩的な技で申し訳ない気持ちになるけれど。



スケボーと一体になる感覚が凄く懐かしかった。


もう二度と乗れないと思っていたスケボー。


嬉しくて涙が滲んだ。



ずっとずっと練習していたあの頃、突然の死に失われてしまったそれが戻ってきた事に感謝の気持ちで一杯だった。



「モルト、ぺトラス、本当にありがとう」


2人に向けてそう叫べば、嬉しそうに笑ってくれた。



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