進化する領地3
「この辺りに麦畑を、この辺りは果樹園を、そして、それを囲む様に民家もちらほらでき小さな村を形成しております」
テーブルに広げた地図を指さしながら、ぺトラスは説明してくれる。
「わしらも、お言葉に甘えて引越しさせてもらいやした」
「えっ? それはいいけど。貴方達2人は街で住んだ方が便利じゃないの?」
モルトの言葉に目を丸くする。
鍛冶屋と家具屋は農地の近くに居るより、街の方がいいわよね?
水車小屋の周りを農工地区にしようと、それに従事してくれる人達の住居を作るとこは認めたけれど、モルト達まで来るとは思ってなかったんだよね。
「私供2人はお嬢様の専属部隊ですので、あの地域の発展に貢献したいと思っております」
ぺトラスはそう言って満足そうに笑う。
「これからあの周辺は発展しますじゃ」
ぺトラスに追従する様にモルトが頷く。
何やら私の知らない間に大事になってたみたい。
それはそれで領地に貢献出来るので嬉しくはあるものの、驚いた。
「近々、視察に行かないとね。水車の竣工式はお父様達が帰ってきてからになると思うけれど。先に見ておきたいわ」
「へい、是非ともおいでください」
モルトが頷く。
「民家が増えているのならば、川の土手の補修工事もしなければいけないわね」
大雨で川が氾濫とかしたら、元も子もない。
「土木工事に、詳しい者を近々迎える予定です」
「それはいいわね」
うんうん、話が上手く進んでいる様で安心する。
「牧羊をしたいと申している者が居るのですが、いかが致しましょうか?」
「うーん。動物は匂いもあるから、民家から離れて影響のない場所でなら問題はないわ」
衛生的にも民家の近くは望ましくない。
「それじゃ、民家から離れた風下に未開拓の土地があるので、そこを進めておきますじゃ」
「そうしてちょうだい」
モルトの言葉に頷いた。
村を作る構想は無かったけれど、出来てしまっているのならば、住民の事を考えなければね。
「私の訪問に関する細かい調整はキャサリンと行なってちょうだい」
背後に控えるキャサリンに目を向けた。
「かしこまりました」
丁寧にお辞儀したキャサリン。
「本日はお嬢様にお届け物がございます」
ぺトラスはそう言ってモルトに目配せをする。
モルトは頷いて立ち上がると、ソファーの後ろに何かを取りに行った。
「以前お話していた物を、ワシらなりに作り上げたもんです」
大きな長方形の箱をモルトが差し出した。
背後に控えていたヨヒアムはそれを受け取ると、膝を曲げ私の前にしゃがみ込んだ。
何かしら……。
不思議に思いながら、長方形の箱を蓋をゆっくりと開いた。
「……あ、あぁ、これ」
懐かしいフォルムのそれに、感動で涙が浮かんだ。
いつも読んでくださりありがとうございます(⁎-ω-⁎))"ペコンチョ
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