進化する領地2
キャサリンとヨヒアムを従えて、広くて明るい廊下を進む。
私的には優雅にスタスタと歩いているつもりではあるが、何分5歳児の短いリーチでは、トコトコ歩いてるようにしか見えないのが現実である。
「今日もお嬢様が愛らしい」
「あんなに一生懸命歩いてらっしゃる」
すれ違うメイドや侍従者達からの生暖かい視線に気づかない私では無い。
壁際に避けて微笑ましくこちらを見るはやめて欲しい。
恥ずかしさを隠してすまし顔でそそくさと通り過ぎるのが精一杯だった。
違う事を考えよ。
今から会う事になってる鍛冶屋と家具屋には、あるミッションを頼んでいる。
いい報告が聞けるといいんだけどな。
今から半年前の誕生日に領地の一部を貰い受けたことから、このミッションは始まった。
川沿いの未開拓の土地を貰った私は、ある計画を立てたのだ。
川の流れを利用した水車と、それを利用した粉引き小屋の建設に着手している。
そのミッションの柱となって動いてくれてるのが、鍛冶屋と家具屋である。
5歳児の無茶振りによく付き合ってくれてると思う。
初めは怪訝そうにしていた2人だけど、何度か会ってるうちに打ち解けてくれた。
「お嬢様のご到着です」
ヨヒアムが応接室のドアを開けてくれる。
鍛冶屋モルトと、家具屋のぺトラスが、ソファーの後ろに立ったまま丁寧なお辞儀をして出迎えてくれた。
執筆が出してくれたであろうお茶も手付かずだ。
「待たせたわね。毎回言うけど、座って待ってれば良いのに」
緊張で身を固めたままの2人に苦笑いして、ソファーへと向かった。
「お嬢様、そう言う訳には行きませんて」
恐縮そうに頭を搔くのは、ずんぐりむっくりなモルト。
なんでも先祖かドワーフの血を引いているとかで、屈強な体つきの割には背は低い。
「とにかく、座って。話が聞きたいわ」
掌をテーブルを挟んで前の席へと向ける。
「へ、へい」
「かしこまりました」
モルトと、ぺトラスは、正面に回り込むとソファーに浅く腰をかける。
「それで、進捗状況はどうなの?」
ワクワクする気持ちを抑えつつもそう聞けば、
「ほぼ完成したと言えます」
とぺトラスが胸を張った。
「まぁ、ほんとに?」
「水車の試運転をして、粉引きの臼が問題なく動けば完成です、へい」
モルトの方も自信ありげな顔で頷いた。
私の拙い前世の記憶で、良くも完成までこぎつけてくれたと思う。
イラストにして説明したものの、如何せん専門家じゃないから曖昧なものしか伝えられなくて。
モルトとぺトラスは試行錯誤して、私の曖昧な記憶を現実にしてくれたんだよね。
本当に感謝しかない。




