進化する領地1
視察に出ている家族が帰ってくるまで1週間をきった。
早く皆に会いたいと5歳児の心がワクワクしていた。
演習場での練習メニューも、今では3分の1を出来るようになってきた。
日々の努力の成果だと思う。
ぷにぷにした5歳児から、少しスタイリッシュな5歳児になった気はしている。
ふんぬと力瘤を作ってみようとしたのの、まぁ力瘤なんて出来るわけないよねー。
今後に期待ってことで!
コンコンと軽いノックが聞こえ、キャサリンがドアへと向かう。
ドレッサーから視線を外しドアへと向けると、キャサリンが開けたドアから見えたのは執事のセバステン。
少し惜しい名前だと思う。
「鍛冶屋と家具屋が参りました。応接室に通しておきました」
「あら、もう来たのね」
セバステンの言葉に、部屋の掛け時計を見ると、約束の時間の20分前だった。
「お嬢様とのお約束ですからね。余裕を持って来るのが当たり前です」
いつの間にか戻ってきていたキャサリンが、背後で私の髪を丁寧にとかしつけながら言う。
私は苦笑いを浮かべセバステンを見た。
「用意が出来次第向かうから、お茶でも出してあげて」
「かしこまりました」
丁寧に頭を下げたセバステンは、ドアを静かに閉めた。
辺境伯領は王都に比べて領民と私達の垣根が低いといえど、身分の差はやっぱりある。
地球の庶民として生きた記憶のある私には、やっぱり違和感なのだけれど。
辺境伯領令嬢として生きるならば、これもまた飲み込まなくてはいけない事ではある。
「お嬢様、髪飾りはこちらでよろしいでしょうか?」
鏡越しに見えた銀色の薔薇の髪飾り。
「そうね」
私の着ている淡い黄色のシルクオーガンジーを重ねたドレスによく似合っていた。
胸元で切り替えられた布がヒラヒラとしていてお気に入りのドレスなんだよね。
強くてセンスのいいキャサリンは、パーフェクトウーマンじゃないかと思ってるの。
「はぅ……お嬢様が尊すぎる」
髪飾りをつけ終えたキャサリンが胸元を握り締める悶絶する。
そう、これさえなければね。
ドアの傍で待機していたヨヒアムがキャサリンに向かって親指を立てて、満足そうに頷いてる。
キャサリンにしても、ヨヒアムにしても、私ファーストが酷すぎるのだ。
「行くよ」
私は急いで椅子から降りると、ドアへ向かって歩き出す。
2人が暴走する前に移動しておかないと、面倒臭い事になるもんね。




