波乱の辺境伯領41
「改めて言うが、この度の任務、ご苦労だった。詳細の報告を頼めるかな?」
執務室のソファーに腰を下ろしたお父様が、対面に座る私の方を見た。
「はい。皆が頑張ってくれたおかげで、迷いの森の魔法陣の撤去と、隣国の本拠地を制圧致しました。キャサリン」
ヨヒアムと共に背後に控えていたキャサリンに目を向ける。
キャサリンは頷くと懐にしまってあったカルト集団の書物を差し出してくれた。
私はそれをテーブルの上を滑らせるようにお父様に差し出す。
「こちらがカルト集団に代々伝わる書物です。迷いの森の道標と各地にあるカルト集団の拠点が書かれております」
「なんと、こんなに拠点が……」
手に取りぱらりと書物を捲ったお父様が気難しげに眉を寄せた。
「こちらがあれば殲滅も難しくないかと」
「ああ。これを元に拠点を叩ける。これを持って王城に行き、各国の要人と作戦を立てよう」
「後のことはお父様にお任せしますわ」
頷いて微笑んだ。
この後の事は大人達に頑張って貰わなきゃね。
「辺境伯領にあった拠点の制圧は完了している。凶暴化した野獣の殲滅も粗方終わっているよ」
「はい。領民達に被害が出なくなったのなら、本当に良かった」
「ああ。領民は無事だよ。アリーシャ、本当によく頑張ってくれたね。幼いお前に大変な役目を押し付けてしまって申し訳なかった」
お父様は父親の顔で私を見る。
「いいえ、お父様。私が自ら選んだ戦いでした。辺境伯領の、いえこの国のお役に立てて良かったです」
「お前が我が娘で本当に私は誇らしいよ」
「私もお父様の娘で良かったです」
互いに微笑み合う。
「アリーシャが記憶を持ったまま生まれてきた事に意味があったのでは無いかと、今改めて思うよ」
「私も騎士として生きた時のリベンジだったんじゃないかと思います」
後の時は戦いの最中に命を落としてしまったけれど、今回はここまでカルト集団を追い詰める事が出来たのだから。
「ああ、そうかも知れないね。だが、アリーシャはこの生では騎士では無い。だからね、もうゆっくり休んでおくれ。戦いに向かわせた後に言うことでは無いかも知れないけれどね」
お父様の苦悩が見て取れた。
6歳児を一個小隊と元に送り出した事にお父様なりの葛藤があったのだろうと思う。
「お父様、ありがとう」
私は立ち上がるとテーブルを回り込んでお父様に、抱きついた。
後悔なんてして欲しくない。
お父様は私の我儘を聞いてくれただけなんだもの。




