波乱の辺境伯領40
見張りの騎士達を数名残し、私達は辺境伯へと帰還する事になる。
クリスホードが隣国の兵を差し向けてくれれば、居残り組の騎士達にも帰還するように伝えてある。
隣国の人間の処遇は隣国で決めてもらいたい。
それに協力体制とはいえ、私達が介入する事でもないのだから、あとは周辺諸国の上層部の人達にお任せだ。
馬を借りた街まで戻り、馬車と馬を返した私達は、再び迷いの森のへやってきた。
来た時とは違って、森を最速で突っ切るルートで帰れるのでこちらの方が断然早い。
私は印なんてなくても迷いの森で迷わないのだから。
行きと違って捕虜も居ないし、サクサク進んであっという間に自国に帰ってきた。
領都に到着したのは、朝日が昇る頃だった。
東の村に立ち寄ることも考えたが、皆がまだ眠る明け方に騒がしくするのも申し訳ないので、領都まで一気に戻った。
「お嬢様のおかえりだ。門を開けろ」
ヨヒアムが門番に声をかけると、音を立てて大きな門が動き始めた。
騎乗したまま門をくぐり抜け玄関アプローチまで進めば、風魔法で先触れを出しておいたおかげかお父様を筆頭とした出迎えメンバーが待ってくれていた。
「お父様!」
騎乗したまま手を振った。
「アリーシャ、おかえり」
笑みを浮かべたお父様の顔はほっとしていた。
ヨヒアムに馬から下ろしてもらうと私は駆け出す。
6歳児の私がお父様に会えた事を喜んでいた。
「よく無事に戻ったね」
「はい。目的を果たして帰ってまいりました」
お父様に飛び付くように抱きつけば、しっかりと大きな手が支えてくれた。
頭を優しく撫でてくれるお父様の手に、ほっと一息つけた。
「皆も、強行スケジュールを良くこなしてくれた。感謝する」
お父様は私を抱き上げたまま、一個小隊に向かって声をかける。
「「「はっ」」」
騎士の礼をとり一同が片膝をついた。
「此度の任務ご苦労だった。アリーシャについてくれた一個小隊の皆は、これより5日間の休暇とする」
「有り難きお言葉」
小隊長の一人が代表して礼を述べる。
「皆、ありがとう。これで解散よ。後はゆっくり過ごしてちょうだい」
誰一人欠けることなくこの場に戻れた事が嬉しかった。
「「「はっ」」」
騎士の皆の顔が笑顔だった事で、私まで笑顔になれた。
「アリーシャはもう少し頑張れるかい?」
「はい」
本当は眠くて仕方なかったけれど、報告するまでは頑張るのだと心に誓う。
「いい子だ。ヨヒアムとキャサリンも一緒に執務室に来てくれ」
お父様は私の頭を撫でた後、ヨヒアム達に声をかけた。




