波乱の辺境伯領36
「本拠地の見張りの配置はこことここ、それから、この辺りが入口で、捕虜が言う地下へ続く階段は、この奥の書斎となっているそうです」
ヨヒアムが斥候が持ち帰ってきた情報と捕虜の話を元に簡単な地図を書き上げた。
護衛騎士なのに、多彩な才能を持ってる彼は本当に頼りになる。
岩山近くの雑木林に私達は陣を敷いていた。
ヨヒアム、キャサリン、私、そして3人の小隊長で、今後の作戦を話し合っている。
「小隊を3部隊に分け、陽動と襲撃、それからお嬢様と共に奥の部屋に向かうメンバーで構成しましょう」
キャサリンは、小隊の人数を割り振りながら紙に書いていく。
今回連れてきている一個小隊は40人で編成されているから、15、15、10人で分けた部隊を作るようだ。
「ならば、この15人ずつを陽動と襲撃に、残りの10人はお嬢様と僕達と行動してもらう事で」
ヨヒアムはキャサリンの割り振りを見ながら、3人の小隊長にそれぞれの配置場所を伝える。
「「「御意」」」
3人は緊張した硬い表情で頷いた。
「本拠地に居るのは、目視できただけで30人。うち5人が魔法使いということです。推定では有りますが、建物の大きさから見て、多く見積っても50人程では無いかと思われます」
静かにみんなのやり取りを見ていた私は、ヨヒアムの予想を聞いてふと考えが浮かんだ。
いっその事、魔法で建物を壊しちゃえばいいんじゃないかと。
「ヨヒアム、建物の作りはどんな感じなの?」
「石造りの神殿のようなものだったと報告を受けています。隣にある納屋は木造建築だったとのことです」
「そう。なら、陽動に納屋は燃やせても、建物自体を壊すなら爆破するしかなさそうよね」
燃やすより爆破するのは、ちと手間がかかるんだよね。
「お嬢様、好戦的すぎます。爆破は最終手段ですよ」
コホンと咳をしたキャサリンになだめられた。
「やっぱりダメなのね」
「先ずは制圧を試みましょう」
キャサリンから、駄々っ子を説得するような瞳を向けられた。
いや、別に何がなんでも爆破したい訳じゃないんだけどね。
「お嬢様、迷いの森の経路を記した書物の存在を確認して、確実に廃棄しなくてはいけないので、一先ずは制圧する事にしましょう。今はその為の作戦会議ですし」
ヨヒアムまで説得してきた。
だから、ちょっと提案してみただけなんだってば。
「……そうね」
もうお口チャックしとこう。
「夜襲をかける事になるので、暗くなる迄、皆休憩を取るように。焚き火は、カルト集団に気づかれると不味いから使うのは禁止だ。月が真上に差し掛かる頃に出陣だ」
「「「はっ」」」
小隊長達は一礼して、各部隊へと散っていく。
「焚き火が使えないなら、私が炎魔法でスープ温めてあげようかしら?」
冷たい食事とか騎士の皆が可哀想よね。
「お嬢様は魔力を温存して、少しお眠りになっておいてくださいませ」
困った顔のまま愛想笑いを浮かべたキャサリンに却下された。
色々と裏目に出る一日だよね。
いつも読んでくださりありがとうございます(⁎-ω-⁎))"ペコンチョ
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