贈り物なんて呪いでしかない5
キャサリンの準備してくれていたお茶を飲み。
料理長おすすめのパウンドケーキを食べて、私は次の予定へと移った。
お兄様のお下がりのトラウザーを履いて、シャツを着る。
動きやすい格好で、演習場へとやってきた。
「お嬢様、お怪我にだけはくれぐれもお気をつけください」
心配そうな顔をしたキャサリンが後ろをついてくる。
「大丈夫だよ。基礎体力を付ける練習をするだけだから」
危ない事は何一つないし。
説明しても、キャサリンの顔はやっぱりまだ心配そうだ。
「お嬢様~」
先に準備に来ていたヨヒアムが私を見つけて、大きく手を振りながら駆けてくる。
私と同じようにトラウザーとシャツに着替えたヨヒアムは、薄着になっているせいもあり筋肉質な体型が強調されていた。
普段の鍛錬を欠かさずやってる証拠だね、うんうん。
さすがに私もあそこまで筋肉をつけたいと思ってはいないけど、このぷにぷにした5歳児体型からの脱却をしたい。
「ヨヒアム、お待たせ。今日のメニューはこれね」
「柔軟体操と走り込みですか? 中々よく考えられてますね。お嬢様、どうやってこんなの知ったのですか?」
「と、図書館で調べたのよ」
図書館では調べてないけど、そういう事にしておく。
前世の記憶です、と言うわけにもいかないしね。
「この一番上のラジオ体操ってなんですか?」
うん、気になるよね。
「と、遠い東の国に伝わる柔軟体操の一つらしいのよね。先ずは私がやってみるから真似してみて」
ラジオ体操は、本気でやると体が解れていいんだよね。
しかも、真剣にするといい汗をかけるし。
小学生の頃、夏休みの早朝からかかっていたあの音楽を思い出しながら、ラジオ体操を真剣に行う。
あの頃は、眠いのも相まってダラダラしてたっけ。
「あ、これいいですね。体の筋肉が解れる」
ヨヒアムは私の見よう見まねでラジオ体操をする。
ラジオ体操でも真剣にするイケメンは様になるんだね。
「これは騎士団でも導入するべきですね。体全体を使うから凄くいい」
ヨヒアムは涼しい顔でキビキビとラジオ体操をしてる。
ラジオ体操も終盤になっていて、私はすっかり息が上がっているというのにだ。
教えた側なのにヘトヘトになってるのが、かなり悔しい。
しかも始まりと言えるラジオ体操なのに。
5歳児の体力少なすぎ……。
最後の深呼吸までしっかり終え、限界を迎えた私はその場にお尻をついてへたり込んだ。
「はぁ……はぁ」
息は上がってるし、汗だくだ。
「お嬢様、お水をどうぞ。少し休憩をなさってください」
気の利くキャサリンはすかさず私に駆け寄り、水の入ったコップを手渡してくれる。
手に持ったタオルで汗を拭ってくれるキャサリンに、「ありがとう」と伝えると、優しい笑みが返ってきた。