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波乱の辺境伯領28


どれぐらいそうしていたのか。

光は泡のように次第に消えていく。

そして、現れたのは底が見えるぐらいに透明で陽の光にきらきらと光る水がたっぷりと湛えられた泉。

先程までのどす黒さなんか、もう何処にも無い。


「な、なんてことだぁー」

男の叫び声が虚しく木霊する。

うるさいな。


成功した!と喜びに心が打ち震えた瞬間、私の体はゆっくりと傾いていった。

あぁ、全開で魔力使ったから、魔力切れだ。

でも、悔い無し。


「お嬢様ぁ!」

キャサリンの悲鳴と激しい足音がした。

地面にぶつかる前にふわりとした感触に支えられる。

それがキャサリンの腕だと確信して、私は意識を手放した。

役目を果たしたから、少し休ませて。



パチパチと薪の爆ぜる音にゆっくりと目を覚ますと、そこは見たことの無い室内で。

体を横たえてる場所は、簡素なベンチの様な長椅子で、柔らかい布を敷き詰めた上に寝かされていた。


音のする方向に顔だけを向けると暖炉が赤々と燃えていた。

体を起こそうとして、あまりにも重い体に断念す

る。

限界まで魔力を使い切った体はかなり体力を消耗していた。


カルト集団はどうなったのだろうか?

意識を失う前に制圧は終えていた様な気はするけれど。

私の信じる皆はきっと上手くやってくれたはず。


蝶番の軋む音が響き、ドアが開くと誰かが入ってくる足音がした。

視線を向けるとランタンを手にしたキャサリンの姿があった。


「お嬢様! お目覚めになられたのですね」

少し泣きそうな顔でほっとしたようにそう言ったキャサリンが駆け寄ってきた。


「……キャサリン」

乾いたのどから、掠れた声が出た。


「体は大丈夫ですか?」


「体が重くて……」


「お手伝いします」

キャサリンは私の体を抱き上げ、椅子に座らせてくれる。


「こちらをお飲みください」

用意していたグラスに水を注いで差し出してくれた。


「ありがとう」

両手で持ったグラスを口元へ運ぶと水を口にする。

乾いていた喉がゆっくりと潤っていく。


「痛い所や苦しい所はありませんか?」

私の前に膝まづいたキャサリンは心配そうに顔を覗き込んできた。


「うん。魔力を使い過ぎて体がだるいだけよ? ここは何処なの?」


「それはよかったです。ここは、泉の近くにあった小屋です」

キャサリンの言葉にやっぱりそうかと頷いた。


「カルト集団の制圧は上手くいったのかしら?」


「はい。お嬢様のおかげで魔法使い達も武装した5人も簡単に制圧出来ました。縛り上げてその辺に転がしてあります」

いい笑顔で親指を立てたキャサリン。

敵の扱いはかなり雑そうだ。

まぁ、それは仕方ないよね。


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