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波乱の辺境伯領26


「キャサリン、口元が動き始めたら教えて」


「かしこまりました」

望遠鏡を覗きながらキャサリンはその時を待つ。

3人が詠唱を始めたら、少しぐらい別の魔力の歪みが出たとしても気づかないだろう。

見た感じだけど、それほど高位の魔法使いにも見えないしね。


「お嬢様、今です」


「了解」

ゆっくりと静かに魔力を地面に這わせて行く。

小屋までの今日はそんなに遠くない。

魔力を練って、中の様子を伺う。

生体反応はない、その事にほっとして魔力を遮断する。


「中には生体反応が無いから、人や生き物は居ないはず」


「それならば、外の8人を制圧するだけで済みそうですね」


「うん」

これぐらいの人数なら、私達で十分に対処可能だよね。


「各自、今から配る魔法付与された宝石をタイミングを合わせ魔法使いに向かって投げてくれ。現場が混乱したら、左の3人の制圧はイスラお前の小隊だ。小屋の前の2人はモルスの小隊、ロキヤの小隊は正面で待機し、お嬢様が魔法使いを無効化したら、即座に捕縛」


「「「はい」」」


「イスラは炎、モルスは氷、ロキヤは風の付与魔法を渡す。投げる順番は、炎、風、氷。それぞれ5つずつ渡す。小隊内の投石の上手い奴が投げてくれ。着弾する事に次を投げろ」

ヨヒアムの作戦は面白い。

炎が出て風に煽られて燃え広がり、その後氷で足元が固まる。

そんなのを繰り返されたら混乱するしかない。


「あと、武装した敵を捕縛する前に土魔法の宝石を投げてね、地面が隆起して体勢を保てなくなるはずだから」

狡いやり方だけど、こちらに出来るだけ危険がないようにね。


「お嬢様が味方で本当に良かったと思います……いてっ」

敵になったら怖い、とぼそっと言ったヨヒアムに、キャサリンの拳骨が落ちたのは言うまでもない。

皆の顔に笑みが浮かんだ事で緊張がほぐれた。


私も失敗しないように、頑張らなきゃね。

混乱した魔法使いをしっかり制圧してみせる。



「全員、静かに配置につけ。作戦は、5分後に開始だ。僕が合図するまで身を潜めて待て」

ヨヒアムの言葉に頷いた騎士達が散らばっていく。

私とキャサリンも静かに進み始めた。


この作戦を失敗する訳にはいかない。

何がなんでも成功させてみせる。

私の定位置は、泉の前の魔法陣が見渡せる所。

敵の魔法使い達は、まだ呪文を唱えていてこちらの気配すら勘づいていない。


茂みに隠れ、その時を待つ。

どす黒く濁った泉が泡立ち始めた時、ヨヒアムの合図の笛がぴーっと響いた。




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