波乱の辺境伯領23
迷いの森の中とは思えないぐらいに賑わう食事。
一緒に来た一個小隊の騎士達は、20代から30代前半の人達で構成されている。
若くて体力のある彼らはうちの精鋭部隊だ。
いつも厳しい訓練に耐え、領内を守ってくれてる
和気あいあいと楽しそうに食事をしている彼らの命を守らないといけないと、改めて思った。
危険な迷いの森に入る事はこの旅に出る前に大勢の騎士団の前で事前に告げた、その上で参加者を募ったんだ。
未知な森の探索と不明な存在のカルト集団を相手にするのは、かなり危険な事だから、無理やり連れてきたくなかった。
急な話にも関わらず、ほとんどの騎士達は参加を表明してくれ、その中からヨヒアムが選び抜いたのがこの一個小隊。
この彼らと共に無事に帰還するまでが、今回の任務。
「お嬢様、肩の力を抜いてください。小さなお嬢様に負担を強いるほど彼らは弱く有りませんよ」
私の心の中を読んだかのように言うヨヒアムは、心配そうにこちらを見る。
「……そうね」
「お嬢様が一人で抱えなくてもいいんですよ。それは大人の僕達に任せてくれればいいんです」
ぽんっと自分の胸を叩いたヨヒアム。
「抱かえているつもりは無いのだけれど、ココに来る事になったのは私のせいでもあるもの」
「お嬢様のせいだなんて事は無いんですよ。お嬢様だって神様に巻き込まれた側なんですからね。本来なら6歳児のお嬢様に頼る俺達の方がダメなんですよ。聖属性を使えるお嬢様にしか出来ない事だから来てもらっているだけなんですから」
「そうですよ。ヨヒアムの言う通りですからね。お嬢様が背負う事なんて一つも有りませんよ」
いつの間にか傍に来ていたキャサリンが横から優しく抱き締めてくれる。
「キャサリン……」
「お嬢様は何事も頑張りすぎなんですよ。私達がお傍に居るんですからいくらでも頼ってください」
「そうね。そうだったね」
肩の力が抜け、涙が少し滲んだ。
「さぁ、夕飯を召し上がったのなら、今日は早めに休んでくださいませ。明日も忙しくなりますよ」
「うん」
キャサリンの言葉に優しい笑顔でヨヒアムも頷いていた。
私には2人が居てくれる。
そして、騎士団の皆だっているんだ。
先の見えない未来に、不安だった気持ちが軽くなった。
焚き火のぱちぱちと爆ぜる音と、森の草木のざわめきを背中に受けながら、私は用意されたテントへと体を滑り込ませた。