波乱の辺境伯領15
重い空気が流れる執務室。
先に声を上げたのはジェフリード。
「騎士団長率いる騎士団の向かえ感謝します。おかげで野獣の襲撃を難なく突破出来ました」
「いえ。ジェフリード様の御身がご無事で良かったです」
「凶暴化した野獣にカルト集団が関係していることを聞き及んでいます。事の進展はどの様に進んでいるのでしょうか?」
「はい。どうやら、カルト集団は迷いの森の最深部で野獣を使い凶暴化させる実験を行っているようです。迷いの森の泉は負の感情が集まる場所であり、その浄化を行う場所なのだそうなのですが。浄化しきれない負の感情が溜まり過ぎそれが溢れ出しているそれを使い奴らは野獣を凶暴化させているのです」
「なんと……そのような事が」
驚きを隠せないジェフリードに、お父様は話を続ける。
「迷いの森の近くの東の村が野獣の襲撃を受け、その対処に我が息子が向かいました。迷いの森の泉を浄化せねば事態は収拾できそうにありません。精鋭を揃え次第アリーシャが浄化に向かいます」
「え、アリーシャが? このような幼い子にそんな大変な事を任せると言うのですか?」
ジェフリードは私へと目を向ける。
驚くのも無理ないんだよね。
お父様がこちらを見たので私は頷く。
この先を話してしまえば、もう後戻りは出来ないんだ。
「迷いの森を迷わずに進めるのは聖属性の魔法を持つ者のみ。そして泉の浄化を出来るもの聖属性のみなのです」
「まさか……アリーシャが?」
「はい。我が娘アリーシャは聖属性の魔法使い。そして、今の状況を打開できる唯一の者です」
お父様が悲しげに眉を下げた。
「アリーシャはまだ洗礼前だと言うのにどうしてその事がわかったのですか?」
7歳の洗礼式を迎えていない私の属性が分かってるなんて、本当ならありえないよね。
「ジェフお兄様が驚くのも無理はありませんよね」
「あ、ああ」
「私は神の啓示を受けたのです」
啓示って言うよりは、本人来ちゃったけどね。
今までの事を全部話す事はないから、啓示って事にしておくのがいい。
転生云々とか、ややこしくなっちゃうし。
「なんと、アリーシャは神の啓示を受けたのですか?」
「はい。私の持つ聖属性の魔法を使い泉を浄化するのだと言われました。なので、私が向かいます」
「……」
ジェフリードは複雑そうな顔で黙り込んだ。
まぁ、うん、そうなるよね。
「ジェフリード様には王都に引き返し、王都に隠れているカルト集団を見つけ出していただきたい。それと隣国に連絡をしてかの国に潜んでいるカルト教団についても捜索するように伝えてもらいたい。もしかするとカルト集団は新王を狙っているやも知れません」
お父様は私の言葉を引き継ぐようにジェフリードに告げる。
「……事態は急を要するのですね」
「はい。急務にございます」
「分かりました。馬車で帰ると時間を取られてしまうゆえ、風魔法を使い騎乗で帰ります。最速で飛べば2日ほどで着くはずです」
ジェフリードは風魔法の使い手だと知る。
彼の乗る馬に聖属性をかけてあげようと思う。