贈り物なんて呪いでしかない3
食事を終え1人になった私は、いよいよ神様の迷惑な置き土産を確認してみる事にした。
「ステータスオープン」
なんて言っても、ステータス画面が出るわけないか……。
目を瞑って自分の中にある魔力に意識を向ける。
3歳の時に同じ事をして魔力があるのは分かった。
そして、お母様の炎魔法とお父様の風魔法を引き継いでることも。
子供は7歳になると神殿で洗礼式をして、初めて魔力の有無と属性を知る事になるから、この事は誰にも秘密なんだよね。
お腹の奥の方で渦巻く魔力が、以前よりもかなり増えているのが分かる。
そして、使える属性が増えた事も。
目を開け手を目の前に突き出し、呪文を口にする。
「アイス」
手のひらの上で氷の粒が踊り始めた。
まじか……はぁ……大袈裟に溜息をつくと魔力の流れを止める。
仕方ない、確認作業をしていこう。
「アース」
土がモコモコと掌に盛り上がる。
「ウォーター」
丸い水の球体がふわりと浮かび上がった。
炎と風は、前に確認したから、5属性使えるって事になる。
神様なんて事をしてくれたのかな。
大魔法使いでさえ、4属性だと聞いたことがあるんですけども。
5歳児にして異質すぎるでしょ、私。
まさか……まさかと思うけど。
お腹の奥の奥の方にもう一つ何かがあるような気がして、何となく頭に浮かんだ文字を唱えた。
「ホーリー」
すると眩しい金色の光が掌から溢れ出した。
「えぇ!」
ほんと、ちょっと待って、聖魔法なんて、聖女じゃない。
これ、絶対バレちゃダメなんじゃないかな。
嫌な汗が額に滲む。
聖女になろうなんて野心も、万人の為に尽くそうと言う決意もない。
私は辺境伯領の皆が幸せに暮らせれば、それだけで良いんだもん。
「神様、なんてものを置き土産してくれたのよ」
苦々しく呟く。
ほんと、呪いでしかないんですけども。
あの神様、絶対何処か抜けてるに違いない。
「……これは、1人でどうにかできるものでも無いわ」
震える指先を隠すように胸元で両手を握り締める。
前世の記憶だなんて、頭がおかしくなったのかと思われるかも知れない。
お父様達が信じてくれなかったら、どうしよう。
私……皆に嫌われたらどうしよう。
大好きな家族に打ち明ける事が、とてつもなく怖かった。
「……お父様、お母様……お兄様」
大切な、ほんとに大切な家族なの。
失いたくない。
溢れ出てくる涙、震える指先。
彼らを失う事になるかもしれない事実に、5歳児の精神は耐えられなくなっていた。
でも……話さない訳にはいかないよ。
今、話さなくても7歳の洗礼にバレてしまうもの。
今伝えなければ、きっと大事になってしまう。
そうなれば、家族と離れ離れになっちゃうかもしれないじゃん。
「大丈夫……大丈夫だよ。うちの家族はきっと私を信じてくれる」
自分に言い聞かせるように呟く。
家族を、自分を信じよう!
顔を上げ、涙を拭って決意した。